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靴の材料

2025.03.05

TPU素材とは?メリットや幅広い用途についても解説!

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こんにちは、岡畑興産靴受託事業の伊集院です。

 

突然ですが、TPUってご存知ですか?

 

くつナビで樹脂や材料に関する記事を読んだ方はご存じかと思いますが、TPUは熱可塑性ポリウレタン樹脂(Thermoplastic Polyurethane resin)の略称です。

TPU素材は幅広い用途で活用されていますが、実は靴にもよく使われています。

 

今回は、このTPU素材がどのような特徴を持つのか、そしてどんな製品で使われているのかをお伝えしていきます!

特に身近な靴や携帯電話のケースなどの製品について、詳しくメリット・デメリットをご紹介したいと思いますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!

 

TPU素材とは?メリットデメリット、用途を詳しく解説!

このTPU(熱可塑性ポリウレタン)というのがどんなものか疑問を持つ人もいると思いますが、ポリウレタンという名前の通り、樹脂材料です。

 

ここでは、樹脂とはなんだ?という深い内容について触れませんが、樹脂について深く説明しているブログがありますので、良かったらこちらも見てください!

樹脂加工とはどんな加工?合成樹脂の種類や活用方法もご紹介!

 

TPUは、ポリウレタン樹脂の中で「熱を加えることで再び溶解し、再度成型を行うことが出来る」種類の樹脂です。

 

ポリウレタン樹脂には、熱硬化性ポリウレタンと熱可塑性ポリウレタンの2つの種類があります。

 

熱硬化性樹脂の場合は、初めに熱を加えて金型で成型を行った後、分子同士がしっかりと結合するため硬くなり、再び熱を加えても別の形状に成型しなおすのが難しい樹脂です。

 

それに対して、熱可塑性樹脂の場合は、熱を加えて成型した後でも分子同士のつながりが強くならず、再度熱を加えることで再度別の形状へと成型しなおすことができます。

そのため、一般的にイメージされるプラスチックよりも弾力性と柔軟性があります。

 

また、樹脂自体の再利用もできるため樹脂自体も安価で、ポリウレタンの特徴である耐衝撃性や柔軟性も持ち合わせていることから、さまざまな身近な製品に使用されています。

 

TPU素材のメリット・デメリット

柔軟性と成型性に優れるTPUですが、もちろんさまざまなメリットとデメリットがあります

メリット

・伸縮性がある

・引張、引裂、摩耗に強い

・弾性があり、衝撃吸収性がある

・水蒸気を通しやすい(水透過性がある)

 

まずはTPUのメリットですが、なんと言っても伸縮性があり、成型性が大変良いことが挙げられます。

 

樹脂の成型は、鋳造のような型を作成し、そこに高音に溶かしたTPUを入れる(射出)ことで、狙った形に成型ができるのですが、その際の取り扱いが非常に簡単なため、さまざまな製品パーツでTPUが使用されています。

 

作業性が良いということは、より安価な製品に対して使用しやすいということにもつながります。

また、成型された製品は弾性と衝撃吸収性があるので傷や衝撃に強く、身の回りの小さなパーツなどで使った場合、落としたり壊れたりしにくいというメリットもあります。

 

デメリット

・熱や水に弱く、加水分解しやすい

・黄変しやすい

 

TPUのデメリットとしては、他の樹脂の熱に対して弱いという特徴があります。

これは、他の樹脂よりTPUが比較的低温で溶けるという特徴があるためです。

 

真夏日や太陽光程度の温度で柔らかくなるということはありませんが、例えば真夏の車の中に置いておくなどすると、自然に変形したり表面感が変わるなど、形状の変化が起きる可能性があります。

 

また、太陽光の紫外線にも弱く、透明や白の製品では、黄色く色が変わる「黄変」と呼ばれる症状が発生しやすいです。

 

この黄変は、表面の変化ではなくTPUの素材自体が黄ばんでしまうため、表面を拭くだけでは取れません。

紫外線を浴びやすい外に置いておく製品では、黄変が目立つ薄い色ではなく、黒や青など濃い色合いのものを選ぶことで、見えにくくするなど工夫も必要です。

 

 

TPU素材が使われる代表的な製品は「スマホケース」!

靴でも幅広く使われているTPUですが、その他のTPUを使われる製品の中で最も身近な製品として挙げるとすれば、皆さんが今も手に持っているスマートフォンのケースだと思います。

一般的にスマホケースと呼ばれるものですね。

 

TPUをスマホケースに使うメリットとしては、衝撃吸収性があるため、スマホを落とした際の本体へのダメージを防ぐことが挙げられます。

衝撃によってTPUのスマホケースが壊れるリスクも低く、スマホへのプロテクターの材料としては非常に理想的な材料と言えるでしょう。

 

樹脂自体が比較的安価なため、製品代金を低く抑えることも可能です。

同じスマートフォン関係でも、薄くフィルム状に成型することで、スマートフォンのガラスカバーのフィルムとしても使われています。

 

ただデメリットとしては、スマホケースを成型する際に機能性を活かすためにある程度の厚みが必要となるため、スマホ装着後にはスマホ自体が厚く感じるという点があります。

 

また、TPUは紫外線で黄変してしまうため、日々使用していく中でスマホケースが黄ばんでくるなど、見た目の変化がどうしても発生してしまうというデメリットもあります。

 

スマホケース以外の用途は?

TPUが最も使用される例としてスマホケースをご紹介しましたが、それだけではなく、実はスマートフォンの中の電子部品や本体の一部パーツにも使用されることもあるんです。

 

スマートフォンひとつ取っても、非常に多種多様な形状・機能があるため、バリエーションを持たせるためにTPU樹脂が使用されています。

 

そのほか、車の社内の表皮材やスーパーマーケットでよく手にするカートのキャスター部分、珍しい物では、3Dプリンターの印刷用樹脂としても使用されることがあります。

 

また、次で詳しくご紹介しますが、靴にも使われています!

 

TPUは靴でどんなところに使われているの?

 

ここからは、靴ではどのような部分に使用されるのかをご紹介していきたいと思います。

 

まず、TPU樹脂が一番どのような場所に対して使用されているかと言いますと、やはりアウトソールと呼ばれる部分です。

 

特にサッカーや野球などの競技用シューズのソールとして使用されることが多く、これはスライディングや地面を削るような動作が多い競技に対して、TPUの耐摩耗性能の高いという点が非常に相性が良いためです。

 

野球スパイクで言いますと、ソールのプレートとして使用されており、そこから金属のスパイクが取り付けられる形になります。

 

また、野球スパイクの中には、金属スパイクの代わりに樹脂スタッドを取り付けるタイプもありますが、ここでもTPUの成型スタッドが使用されることがあります。

 

サッカースパイクの場合、摩耗しやすいスタッドをTPU樹脂、ソールの本体をナイロン樹脂で成型するという、一体成型でソールを作ることが多々あります。

 

これは、TPU樹脂だけでソールを作るとどうしても重くなりやすくなるためです。

グラウンドに刺さって前方への推進力を生み出すので、削れやすいスタッド部分のみをTPUで成型し、軽さに特徴があるが削れやすいナイロンと耐摩耗性が高いTPUを組み合わせることで、軽くて削れにくいソールを作ることが可能になります。

 

そのほかにも、TPUを1ミリ以下のテーブルクロスのような薄いフィルム状にすることで、ニットや織物などのアッパーの材料の上から熱圧着させ、防水・耐摩耗性能を付けるフィルムなどにするなど、ソール以外にも靴の材料として使用されることがあります。

 

もしかすると、あなたが持っているスニーカーやランニングシューズでも、この「TPU-FILM」が貼られている靴があるかもしれませんので、ぜひ一度見てみてください。

 

靴の構造については、以下のブログもチェックしてみてくださいね!

 

TPU素材は幅広い用途で使われているプラスチックの樹脂材料!

さて、今回はTPU樹脂がどのような物で、どのような製品・靴で使用されているかについてご紹介してきました。

 

TPU素材とは熱で加工したプラスチックの樹脂材料のこと。

プラスチックよりもさらに弾力性と柔軟性があります。

 

熱を加えて成型した後でも分子同士のつながりが強くならず、再度熱を加えることで別の形状へと成型し直すことができる素材です。

 

ほかにも、伸縮性がある、引張・引裂・摩耗に強い、衝撃吸収性がある、水蒸気を通しやすい(水透過性がある)などのメリットがあります。

 

代表的な用途はスマートフォン関連ですが、靴にも使われていることが多いです。

また、樹脂はTPUのほかにも多々あり、多くの素材がさまざまな靴に使用されています。

 

 

今後も、くつナビでは色々な材料や靴に関してご紹介していきたいと思いますので、更新を楽しみにしていてください!

 

※岡畑興産株式会社は、化学品事業靴受託事業が連携し、機能性素材の材料開発・用途開発を進めています。

この記事を書いた人

岡畑興産株式会社・靴受託事業部伊集院

シューズOEMと機能材料営業
ランニングサンダル、バイクシューズを担当しています。新しい技術、材料をお客様に提案し、喜んで頂くことが何よりも嬉しい。
お客様のご要望があれば、デザイン提案も行います。

海外勤務経験を活かし、現場の雰囲気をブログでお伝えしていきます。

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