こんにちは、岡畑興産のMaruです。
地球温暖化が進む中、近年の気温の変化に体がついていけず、体調を崩してしまっている方もいるのではないでしょうか。
炎天下では汗をかきやすく、服も濡れてべたつくため、不快に感じる方も多いと思います。
さらに最近では、夜になっても気温が下がらず、寝苦しさを感じることも少なくありません。
エアコンをつけっぱなしにすると電気代が気になりますし、健康への影響も心配ですよね。
夏を快適に過ごすためには、まず服の素材選びから始めるのが効果的です!
そこで今回は、よく耳にする「クールタッチ」、つまり「接触冷感素材」について、その仕組みや種類、メリットをわかりやすくご紹介します。
目次
接触冷感素材とは?「触れた瞬間に冷たく感じる」仕組み
人が物に触れた時、それぞれが同じ温度なのに、鉄の板は「冷たい」、ウールの服は「暖かい」と感じます。
このような皮膚感覚を「接触冷(温)感」と呼びます。
接触冷感の機能がある繊維製品には、主に麻・絹・レーヨン・ポリエステルなどが使用されていることが多いです。
それぞれに繊維内部の水分含有率や、熱伝導率の高低、サラッとした「シャリ感」(やや硬いイメージ)などの特徴があります。
これらの接触冷感素材に触れると、肌の熱が瞬時に生地へ移動するため、ひんやりとした感触が得られます。
なお、生地に触れたときにどれだけ瞬時に熱が移動するかを示す指標として、「Q-max(W/cm²)」という数値があり、 この数値が高いほど、触れた瞬間に冷たく感じやすくなります。JIS規格では、Q-maxが0.100W/cm²以上であれば、接触冷感性があるとされています。
衣類に使われていることが多いですが、タオルケットや敷きパッドなどの寝具にも使われており、近年は幅広い製品が出ているのでチェックしてみてくださいね!
接触冷感素材のメリット・デメリットもご紹介
さらに詳しく接触冷感素材を知るために、メリットとデメリットもご紹介します。
接触冷感素材のメリット
メリットをまとめると以下の3つです。
- ひんやりとした使い心地が快適
- 電気代の節約になる
- 冷えに悩まされにくい
ひんやりとした使い心地は第一のメリットですが、気温が高くなる夏場でも、エアコンの使用頻度を抑えられるなど、省エネにつながることも大きなメリットです。
寝具や服装に接触冷感素材を取り入れることで、エアコンの温度設定を過度に下げる必要がなくなり、電気代の節約にもつながるでしょう。
また、長時間にわたってエアコンや扇風機などの冷風を体に直接当てると、体が冷えやすくなり、体調を崩す原因になります。
その点、接触冷感素材は体の表面にひんやりとした感触を与えるだけで、体の芯まで冷やすことはありません。
そのため、冷えすぎによる体調不良の心配も少なく、安心して使用できるでしょう。
接触冷感素材のデメリット
デメリットをまとめると以下の3つです。
- 冷感は長時間は続かない
- 低吸水性
- 毛玉ができやすい
接触冷感素材は、皮膚に触れた瞬間にひんやりと感じる感覚であり、外気温の高い屋外などでは冷たさが持続するわけではありません。
例えば、接触冷感素材によく使用されるポリエステルは、吸水性が低く、水分や汗をあまり吸収しません。
また、接触冷感素材は他の繊維と比べて毛玉ができやすいものが多く、衣類の場合は脇の下や内股など、摩擦の多い部分は使用しているうちに毛玉が目立つようになることも。定期的な買い替えは必要になるでしょう。
さらに、接触冷感素材は熱に弱いため、乾燥機を使用すると繊維が傷んでしまう恐れがあります。洗濯後は、なるべく自然乾燥を心がけてくださいね。
選ぶ際には接触冷感素材の種類もチェック!
接触冷感素材について、先ほども主な素材に触れましたが、ここでも詳しくご説明します。
よく使われる素材は、大まかに天然繊維、 再生繊維・合成繊維、特殊加工素材の3つに分けられます。
接触冷感素材の衣類を選ぶ際の参考にしてみてくださいね!
天然繊維:麻、絹など
天然繊維とは、植物や動物など自然由来の原料から得られる繊維のことで、吸湿性や通気性に優れており、環境にやさしい素材としても注目されています。
例えば、接触冷感素材としては麻や絹などが代表的です。
麻はQ-maxの値が0.35〜0.4と高く、熱伝導性に優れた素材です。
また、汗を素早く吸収し、乾きやすいという特徴もあります。ただし、手触りがやや硬いため、ごわごわと感じる方もいるでしょう。
絹はQ-maxの値がおよそ0.3で、主成分は人間の皮膚と同じタンパク質で構成されています。そのため、肌なじみが良く、柔らかさや滑らかさを実感できます。
ただし、絹はデリケートな素材であるため、手洗いや専門店でのケアが必要です。
再生繊維・合成繊維:レーヨン、ポリエステルなど
再生繊維は天然原料を加工して作られたもので、合成繊維は石油由来の人工素材です。
機能性やコスト面に優れており、接触冷感素材としてはレーヨンやポリエステルなどが代表的です。
レーヨンは再生繊維で、Q-maxの値はおよそ0.3〜0.35です。もともと絹の代用品として開発された素材であり、滑らかな手触りと上品な光沢を楽しむことができます。
ただし、水や熱に弱いため、洗濯やアイロンがけには注意が必要です。
ポリエステルはQ-maxの値が0.3〜0.35程度の合成繊維です。ポリエステルはシワが付きにくく、防虫剤によって変色しにくい等の特徴を持っています。
一方、匂いや汚れを吸着しやすい性質もありますので、日々の手入れに工夫が必要です。
特殊加工素材:キシリトール加工
特殊加工素材とは、生地に機能性を加えるための加工を施したもので、接触冷感や吸湿性などを高めることができます。
キシリトール加工もその一つで、汗や水蒸気を吸収して生地の温度を下げ、ひんやりとした感覚を得られるのが特徴です。
これは、人間が発する汗や蒸気を吸収し、衣服内の温度を下げることで、着用時に優れた涼感を感じられる仕組みです。
材料を選択する際に、Q-maxの数値を指標として参考にすることは重要ですが、用途や目的に応じて、UVカット、吸水性、速乾性、肌触りなどを含め、その他の機能も総合的に考慮して選ぶと良いでしょう。
接触冷感素材を用いた服やシューズの実例
最後に、接触冷感素材を使用した市販製品の例も2つご紹介しましょう。
まず、ユニクロの「AIRism(エアリズム)」 は、東レの極細ポリエステル繊維を採用しています。
吸汗速乾性や通気性に優れ、滑らかで冷たい接触感を消費者に提供しています。
次に、HAWKINSの「TECHNOCOOL」は、革靴のライニング(内張り)やフットベッドに接触冷感素材が使用されています。
靴内部の温度上昇を抑えるほか、吸湿速乾効果によって蒸れにくく、快適な履き心地が実現されています。
接触冷感素材はこれまで主にアパレル製品に使用されてきましたが、今後は夏用の靴など、どんどんフットウェアへの展開が期待されます。
ぜひ、この夏はチェックしてみてくださいね!
接触冷感素材は近年の夏を乗り越えるためにおすすめの素材!
接触冷感素材とは、肌に触れた際に熱を素早く逃がし、ひんやりと感じられる機能性素材です。
Q-max値で冷感の強さを測定でき、麻や絹などの天然繊維、レーヨンやポリエステルなどの再生・合成繊維、さらにキシリトール加工などの特殊加工素材が代表例です。
衣類や寝具に活用すれば涼しく過ごせるほか、省エネや体の冷やしすぎ防止にも役立ちます。
選ぶ際は冷感性に加え、吸水性や肌触りなども考慮すると良いでしょう。
岡畑興産では、真面目に靴を作っている会社のブログ「くつナビ」を運営しています。
靴や靴の素材だけでなく、製造や市場についてなど、さまざまな知識を発信していますので、ぜひご参考くださいね!
※岡畑興産株式会社は、化学品事業と靴受託事業が連携し、機能性素材の材料開発・用途開発を進めています。