中国出張記の後半はマルが報告します。
ご存じかもしれませんが、台湾の靴産業は中国の外資系の沿海部開放に伴い、1980年後半あたり中国へ進出し、1990年ごろ繁栄期を迎えました。2010年以降、アメリカと中国が貿易戦争を繰り広げる中、中国の生産コストも高まり、靴産業は東南アジアに移転していってます。コロナ後、台湾系の靴工場はリスク分散のために、ベトナム、インドネシア、カンボジア等に生産拠点を移転・増設していました。
後半は2社ご紹介しますが、1つは射出成型のサンダル工場で、もう1つはスノーブーツの工場です。靴工場はそれぞれ得手不得手な分野があるので、1つの工場はすべてのシューズを作れるわけがありません。ですから、この靴受託生産に長年従事している岡畑興産に依頼すれば、工場調査を1つずつ行う必要はありません。私たちに依頼すれば、お客様に適切な工場を提案・依頼させていただきます。
早速見てみましょう。
サンダル靴工場
この工場は主にアメリカ向けグローバルBRANDのサンダルを製造している工場で、中国2か所、ベトナムに1か所あります。
射出成型のEVAサンダルの製造工程を簡単に説明しますと、次のようになります。
① 材料準備
EVA樹脂のペレットを準備(必要に応じて着色剤・発泡剤・添加剤を混合)。
ブランドによってはEVA硬度の設定が異なるので、配合成分からトライアルアンドエラー(試行錯誤)で調整。
② 射出成形
EVAペレットを加熱・溶融し、金型に高圧で注入する(インジェクション)
成形中に発泡が起き、軽量で柔らかいフォーム形状が出てくる。
③ 冷却・離型
成形されたサンダルを金型から取り出し、ラストに入れ、自然冷却させる。
④ トリミング・表面仕上げ
バリ(不要な突起)や継ぎ目を人による目視検査で、手作業で処理する。、
表面を磨く/加工(ラバーゴム底貼り、表面印刷、ロゴの型押し等)
*後貼後の引き締めのり作業風景
⑤ 検品・包装
検針、検品(寸法・外観・欠陥確認)、包装(タグ付け)・出荷する。
EVAサンダルは単色で安く入手できるが、BRANDによっては、ベルト、ソールの後貼り、ロゴ印刷、パーツの縫製、インソール込みが必要かもしれません。
どれもコストの上昇につながる要因なので、開発段階からそこを留意し、交渉が必要だと考えます。
スノーブーツ靴工場
最終日はスノーブーツの工場に来ました。30年歴史を持つ台湾系の靴工場は、複雑なスノーブーツを材料の裁断、縫製から成形まで行っており、品質検査もしっかりしているのが印象でした。
誰もが知る大手BRANDのブーツを長年生産している小さいながらも業界では知る人ぞ知る工場なんです。スキー用のスノーブーツの場合、さらにアウター、インナーというふうに複雑な構造をしているものもあるので、今回は一般的なスノーブーツを例に、簡単に製造工程を説明させていただきます。
① 設計・型紙作成
お客さんはデザインを決定し、
工場はアッパー・裏地・中綿・ソールのパーツごとに型紙を作成する。
② 材料の裁断
・アッパー(人口皮革やナイロンなど防水素材)
・裏地(フリースなどの保温素材)
・中綿(シンサレートなどの断熱材)
これらを型紙に沿って裁断する。
③ 縫製(アッパー部分)
アッパー+裏地+中綿を重ねて縫製する。
ファスナーや紐、ベルトなどのパーツを縫い付ける。
*縫製の作業風景
④ ソール製造
ソールは一般にRB(ラバー)またはEVA+RBで成型する。
RBを使用するのはグリップ力・耐寒性を重視するから。
⑤ アッパーとソールの結合
接着剤で圧着(セメント製法)。
機器で引き締めを行い、フィット感を持たせる。
成型後に防水スプレーをかける。
アッパー材料は防水加工済みであれば、撥水スプレーをかけてもいいし、かけなくてもいい。
*ラストを抜く作業風景
⑥ 仕上げ・検品
バリ取り、装飾の最終調整
検針、検品、梱包を行う。
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靴1足が完成するまでたくさんの技術が必要で、材料の選定から製造が終了するまで気をゆるむことができません。スノーブーツは1足も安価なものではありません。顧客の信頼を得るためには、靴受託生産において、当社がこうした質の確保に細心の注意を払う必要があると改めて気づかされました。
また、今回の見学を通じて、中国の靴工場の運営体制や技術について、ひとまとめ把握することができました。工場の皆様には、温かいご対応と丁寧なご説明をいただき、心より感謝申し上げます。
小さな出来事
余談ですが、出張中、足裏マッサージに行きました。
正直言って、何年ぶりなのか覚えていないぐらいで、しかも中国でマッサージを受けたこともありません。
スタッフはずらにと並んで店で待機していて、いつでも顧客が入るように支度している風景が印象的でした。
わたしは60分のコースを頼みました。足湯のほかに、首をはじめ、肩や背中、腰の筋肉をもみほぐすコースでした。
値段は合理的かどうかわかりませんが、日本よりもやすいのは確実だと思います。
スタッフの年齢層は多岐にわたり、家族全員で仕事をしている錯覚でさえ感じました。
なぜかというと、スタッフの娘さん(きたる9月に小学校に入学するみたい)が自分で作ったなぞなぞを顧客に共有し、みんなであててもらいましたからです。
答えは語呂合わせでもなくて、わけわからない回答ばかりでした。でも、本人はそれなりにゲームを楽しんでいるようでよかったです。
以上、中国の出張記でした。