こんにちは。岡畑興産のこじろうです。
「ゴム」と聞いて、イメージするものは何でしょう?
伸びる、弾力性がある、滑り止め、輪ゴム、タイヤ、チューブ…私たちの生活の中にもゴム製品はたくさんありますね。
ひと言でゴムと言っても、堅さや伸び具合、弾力性が異なるものが数多く存在します。
ゴム製品を取り扱う場合、どのゴムが適しているのか、ゴムの特性を理解しておく必要があります。
ゴムは、私たち岡畑興産にとっても靴のソール材料として身近な素材です。
今回は「天然ゴム」に焦点を当てながら、その種類やメリット・デメリット、用途、他のゴムとの違いをご紹介します。
天然ゴムとは?種類・特徴・用途をチェック
天然ゴムの原料はゴムノキ(ゴムの木)の樹液(ラテックス)です。
ゴムの木は観葉植物としてもお馴染みですね。
枝や茎を切ると、切り口からベトベトした白い液が出てきますが、あれがラテックスです。
ラテックスを凝固し、洗浄や乾燥などの工程を経たものが「生ゴム」です。
さらに生ゴムの加硫(硫黄を混ぜて加熱することにより架橋反応をつくり、ゴムの弾性を増加させる操作)によって製造されたゴム製品を「天然ゴム」と呼びます。
ゴムの木の生育には高温多湿の熱帯地域が向いており、天然ゴムの主要生産国はタイ・インドネシア・マレーシアで、世界の生産量の70%を占めています。
日本も、タイやインドネシアから輸入しています。
天然ゴムは種類には、2つあります。
また、天然ゴムのメリット・デメリットや用途についても合わせてご紹介していきましょう。
天然ゴムの種類
それぞれ、製法と品質の格付け方法が異なります。
RSS (Ribbed Smoked Sheet)
ゴムの木から搾取されたラテックスを凝固させ、ロールでプレスしてシート状にしたものを燻煙で乾燥させた天然ゴムのことで、シート上に付く模様がろっ骨(英語でRIB)の形をしてることから、この名がついています。
また「視覚的格付けゴム」とも呼ばれ、名前のとおり、色などの外観やゴミの量などを目視により格付けし、等級が付けられています。
TSR (Technically Specified Rubber)
ゴムの木から流れ出たラテックスが収集カップの中で自然凝固したものを粉砕し、洗浄後、ブロック状に成型して品質検査を行った天然ゴムのことです。
RSSの視覚で格付けされるのとは異なり、TSRは成分の検査結果で格付けされるため、「技術的格付けゴム」とも呼ばれています。
また、品質規格は国別に基準規格があります。
天然ゴムのメリット・デメリット
〈メリット〉
・反発弾性に優れている
・機械的強度(引裂強度・引っ張り強度・耐屈曲亀裂性・耐摩耗性など)に優れている
・安価である
〈デメリット〉
・耐熱性・耐油性・耐候性・耐オゾン性に劣っている
※これらは天然ゴムの一般的な配合のデータで、配合によっては異なるデータになります。
天然ゴムの用途
天然ゴムはメリットに挙げたような物性面でも優れていることから用途は幅広いです。
主に、耐久性の求められるタイヤや防振ゴムなどの自動車部品に用いられていますが、コンベアベルトやホースなどの工業用品のほか、ゴム手袋や聴診器といった医療用品、輪ゴムなどの日用雑貨、そして靴のソールにも使用されています。
天然ゴムを他の種類と比べてみよう!
ゴムには天然ゴムともう一つ、「合成ゴム」と呼ばれるものがあります。
合成ゴムは天然ゴム(NR)に対して、石油を原料として人工的に合成されたゴムです。
合成ゴムの大きな特徴は、原料や製法により多くの種類が存在すること。
そして、それぞれが様々な性能に特化している点です。
ここからは、天然ゴムと他のゴムの違いを比較するために、代表的な合成ゴムとその特徴を紹介します。
イソプレンゴム(IR)
主成分が天然ゴムと同じため、人工天然ゴムとも呼ばれる。
天然ゴムと比較すると、不純物が少なく品質が一定しているが引裂・引張強度は劣る。
天然ゴムと同じような用途として使われる。
スチレンブタジエンゴム(SBR)
最も流通している合成ゴム。耐熱性があり、天然ゴムより耐老化性、耐摩耗性に優れている。品質が均一で異物が少なく、価格も安価。
ただし、耐油性に劣るため、シーリング用途としては適さない。
クロロプレンゴム(CR)
天然ゴムよりも、耐熱性、耐オゾン性、耐候性、耐薬品性が平均的に優れている。
自動車部品をはじめ工業用品に広く使用される。
アクリロニトリルブタジエンゴム又はニトリルゴム(NBR)
耐油性に優れるため、工業用品・工業部品としての用途が多く、Oリングやオイルシール、オイルホースなどに使われる。
耐摩耗性、耐老化性も良い。
ブチルゴム又はイソブチレン・イソプレンゴム(IIR)
耐ガス透過性(通さない)がある合成ゴム。耐熱老化性、耐薬品性、耐オゾン性も良好。
タイヤチューブや防振ゴム、ガスケットなど工業用品に広く使用される。
エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)
耐オゾン性、耐候性、耐寒性、耐老化性、極性溶剤に対する抵抗性に優れている。
自動車部品などの工業用品に使用され、屋外用途にも向く。
ウレタンゴム(U)
反発弾性もあり、機械的強度、耐摩耗性が非常に優れている。
耐荷重能力もあるため、車輪としての用途が多い。
シリコーンゴム(SI・Q)
シリコーン樹脂で形成された合成ゴム。高度の耐熱性、耐寒性をもち、耐水性、耐薬品性、耐候性、耐オゾン性にも優れている。
食品、薬品、医薬品などの部品や製造現場で多く使われる。
ふっ素ゴム(FKM)
シリコーンゴムよりも優れた耐熱性をもち、耐薬品性も優秀。
耐油性、耐候性、耐オゾン性も優れた高性能な合成ゴム。
シリコーンゴムと同じような用途があるが、高価なため、家庭用品として使われることはあまりない。
天然ゴムの特徴や他の種類との違いを知って上手く活用を!
天然ゴムは、ゴムノキ(ゴムの木)から採取される樹液(ラテックス)から作られた生ゴムの加硫によって製造されます。
耐油性、耐候性などには弱いですが、安価ながら弾性、機械的強度が高く、自動車のタイヤから輪ゴム、靴のソールまで、汎用ゴムとして幅広く使用されています。
天然ゴムはRSS(視覚的格付けゴム)とTSR(技術的格付けゴム)の2種類があり、製法と品質の格付け方法が異なります。
ゴムを大きく分けると天然ゴムともう一つ、石油などから作られる合成ゴムがあります。
合成ゴムは天然ゴムよりも品質、性能が安定しており、種類とその性能も様々です。
天然ゴムと合成ゴムどちらも、それぞれの特徴を活かし、様々なゴム製品として使われています。
ゴムの種類と特性を知って、用途や目的に合わせて使い分けていくと良いですね。
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