2022.12.20
ゴム・ラテックスの種類は?各特性や用途などを詳しくご紹介
こんにちは、岡畑興産の山口です。
輪ゴムやタイヤ、ゴム手袋など「ゴム」が使われたものは身の回りにたくさんあります。
ゴムにも種類があり、それぞれの特徴にあわせて使い分けがされています。
今回はそんなゴムについて説明していきたいと思います。
ゴムとラテックスは同じもの?
“ゴム”は知っていても、“ラテックス”については馴染みのない方が多いのではないでしょうか?
ラテックスとは構成分子としてはゴムと同様であり、ゴムのような個体ではなく、50~500nmほどの粒子径をもつポリマーが水に分散したもの1)。
ゴムの木を傷つけることで得られる乳液も、ラテックスです。
ゴムのもととなる液体のようなものと想像していただくと、イメージしやすいかもしれません。
また、天然ゴムから作られた手袋をラテックス手袋と呼ぶ場合もあるようですが、ラテックスは基本的には「ゴムと構成成分が同じ液状のもの」という理解で良いと思います。
ラテックスに乾燥などの処理を行うことで、ゴム製品が作られていきます。
ゴム・ラテックスの種類は?各特性や用途を解説!
ゴム・ラテックスは、その構成分子によってさまざまな種類・特性があります。
ここではいくつかの種類の特性や用途についてみていきたいと思います。
①Natural Rubber(NR) 天然ゴム2)3)4)
ゴムの木を傷つけた際に得られる乳液(ラテックス)から作られるゴムです。
分子構造としては「cis-1,4-ポリイソプレン」を主成分とし、非ゴム成分としてタンパク質、脂質、灰分を約6%含んでいます。
そのため、NRには残留タンパク質によるアレルギー問題があり、脱タンパク処理等が必要となります。
機械的特性に優れる一方で、耐熱性や耐油性、耐オゾン性が合成ゴムには劣るといった特徴があります。
優れた強度や耐久性から、タイヤやコンベアベルトといった各種工業品等の用途で利用されています。
②Isoprene Rubber(IR) イソプレンゴム3)
イソプレンゴムとは、イソプレンのホモポリマーで構造と性質は天然ゴムに類似しています。
一般的には天然ゴムと同じ構造の「cis-1,4-ポリイソプレン」をIRと呼びますが、化学合成によって得られるイソプレンゴムには「trans-1,4ポリイソプレン」や「3,4-ポリイソプレン」なども存在します。
構造・性質がNRに似ているということから、その用途はNRと同じくタイヤなどの工業用品です。
また、機械的特性はNRに劣るものの、品質の安定性やタンパク質を含まないこと、合成方法によっては残留金属も少ないといった特徴があります。
そのためイソプレンゴムを再乳化して得られるイソプレンゴムラテックスは、手術用手袋やカテーテルなどの医療用用途にも用いられています。
③Acrylonitrile-Butadiene Rubber(NBR) アクリロニトリル-ブタジエンゴム4)
アクリロニトリル-ブタジエンゴムはアクリロニトリルとブタジエンを共重合して得られる合成ゴムであり、側鎖に極性の高いシアノ基を有することを特徴としています。
また、NRと同様に硫黄加硫できること、加工性や機械的特性に優れていることに加え、結合アクリロニトリル量を選ぶことで耐油性を任意に選択できるのも特徴です。
用途としてはNRと同様にタイヤなどの自動車部品から、優れた耐油性を活かしたオイルシールやガスケットなどオイルや燃料油等に接する部品まで、幅広く使用されています。
④Chloroprene Rubber(CR)クロロプレンゴム5)
クロロプレンゴムとは「2-クロロ-1,3ブタジエン」を重合して得られ、主鎖中に二重結合を有するジエン系のゴムです。
結合の種類として「1,4-トランス構造」「1,4-シス構造」「1,2構造」「3,4構造」の4種類が挙げられます。
電子吸引性の塩素が主鎖中の二重結合に直接結合しているので、他のジエン系ゴムよりも耐候性、耐オゾン性、耐熱性に優れています。
また、機械的特性や難燃性、接着性のバランスがとれた合成ゴムでもあります。
用途としては、自動車用伝動ベルトやホース、電線といった工業用品から、接着剤やコーティング剤まで、さまざまな分野で使用されています。
⑤Fluoro elastomer フッ素ゴム6)
フッ素ゴムはフッ素含有モノマーを含む合成ゴムの総称で、代表的なものとしてはフッ化ビニリデン系(FKM)、テトラフルオロエチレン-プロピレン系(FEPM)などが挙げられます。
炭素とフッ素の結合エネルギーが、一般的な合成ゴムの骨格である炭素と水素の結合エネルギーよりも大きく安定しているため、外部からの熱や紫外線のようなあらゆるエネルギーに耐性が向上するという特性があります。
そのため、耐熱性や耐薬品性、耐候性に優れています。
用途としては、その安定性から半導体製造装置や自動車、エネルギー関連、化学プラント工場などで、オイルシール、ガスケット、ダイヤフラムとして用いられています。
ゴム・ラテックスの種類を知って使い分けを
ラテックスはゴムのもととなるもので、わかりやすく言うと「ゴムと構成成分が同じ液状のもの」です。
ゴム・ラテックスには、構成する分子や分子構造によって、さまざまな種類があります。
種類には、天然ゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、フッ素ゴムなどがあります。
それぞれ用途も違うため、製品に求めるスペックやゴムの特徴を理解して使い分けをしましょう。
くつナビでは天然ゴムについての記事もありますので、こちらもぜひご覧ください。
岡畑興産は、東アジアを中心とした化学品専門商社です。
取り扱いのある機能製品は「どこ展」でもご紹介しておりますので、よければそちらも覗いてみてくださいね。
参考文献
- 1)井上利洋、“総説特集 高分子化学工業の将来展望1-エラストマー-ラテックス”、の本ゴム協会誌(2007)<
- 2)渡辺訓江、近藤肇、“ゴムの工業的合成法 第16回 天然ゴム”、 日本ゴム協会誌(2016)<
- 3)服部岩和、“ゴムの工業的合成法 第2回 イソプレンゴム”、日本ゴム協会誌(2015)<
- 4)吉村務、“ゴムの工業的合成法 第4回 アクリロニトリル-ブタジエンゴム”、日本ゴム協会誌(2015)<
- 5)萩原尚吾、“ゴムの工業的合成法 第14回 クロロプレンゴム”、日本ゴム協会誌(2016)<
- 6)入江貞成、“ゴムの工業的合成法 第7回 フッ素ゴム”、日本ゴム協会誌(2016)<