こんにちは、岡興産靴受託事業部のそめやです。
皆さん、スーツやスカートなどの裏地によく使われている「キュプラ」という生地を知っていますか?
ツルツルとした滑らかな質感のイメージがありますが、何でできているか、どんな特性があるかなど、詳しいところまでは知らないという方もいるのではないでしょうか。
実はキュプラは、天然素材を原料とする再生繊維で、地球に優しい現代の需要に合った素材なんです。
靴を作っている岡畑興産でも、今まで環境に配慮した素材をブログでたくさんご紹介してきましたが、キュプラも注目したい素材の一つです。
そこで今回はキュプラについて、特徴やメリット・デメリット、主な用途などを詳しく解説していきます!
目次
キュプラとは?
キュプラはドイツのベンベルグ社が開発した素材で、旭化成が1928年に日本に導入し、3年の月日をかけ技術発展させ生産に成功しました。
キュプラを使った製品は、ツルツルしていてポリエステルに近い見た目をしているので、合成繊維に思われることがありますが、天然素材を原料に作られている「再生繊維」です。
原料には、綿の種(コットンシード)に付いた産毛部分のコットンリンターが使われています。
このコットンリンターは繊維が短く、綿糸には使用することができないため、キュプラは資源の有効活用という面でも優れた素材です。
コットンリンターを酸化銅アンモニア溶液を使って、溶解させてから、繊維を製作します。
その溶液の名前はキュプラモニウムといいます。
キュプラの由来は、その頭部分「Cupra」からきているそうで、「銅アンモニアレーヨン」とも呼ばれています。
再生繊維とは、元々ある物質を化学反応や熱によって溶かしてから、再び繊維として蘇らせたもののことで、焼却してもほとんど有害物質が発生しないため、地球に優しい繊維です。
キュプラは生分解性が非常に高く、土に埋めておくと最終的に土壌内の微生物によって分解されるという特徴があります。
再生繊維についてはこちらのブログでも紹介しているので、ぜひ読んでみてくださいね!
では、そのほかの特徴についても次でご紹介していきましょう。
キュプラの特徴は?メリット・デメリットもご紹介
キュプラにはどんな特徴があるのかも気になりますよね。
メリット・デメリットに分けて詳しくご紹介していきます。
また、似ていると言われるレーヨンやポリエステルなどの他の素材との違いも、あわせてお伝えしますね!
キュプラ素材の製品を選ぶときの参考にしてみてくださいね。
メリット
- 柔らかくしなやかでドレープ性に富む
- 肌触りがツルツルとして滑らか
- 静電気が起こりにくい
- シワになりにくい
- 吸湿性・放湿性がある
- 紫外線による変色が少ない
- 染色性に優れている
- 生地強度がある
キュプラはしなやかさ・滑らかさのある質感なので、例えばスカートを作る際にドレープを入れると、美しく高級感のある仕上がりになります。
加えて、そのような質感でありながら静電気が起こりにくいため、着心地も抜群です。
また、吸湿性・放湿性どちらも兼ね備えていること、紫外線に強いことから、暑い時期のお出かけ着として心強いでしょう。
薄い生地ですが強度もあるので、長く着ることができるのもメリットです。
デメリット
- コストが高い
- 水に濡れると多少伸縮してしまう
- 摩擦により毛羽立ちが目立ちやすい
- お手入れに手間ががかかる
世界でも数社しか製造していないので、キュプラを使った製品が高価であることが多いです。
そして強度のある丈夫な素材ですが、水や摩擦に弱いです。
雨に当たらないなどの日常での意識や、お手入れ・管理には注意が必要でしょう。
洗濯によって縮んだりシワになったりもしやすいため、クリーニングに出すのが理想的ですが、後ほど自宅でのお手入れ方法についてもご紹介します。
他の素材との特徴の違い
レーヨンやポリエステルはツルッとしていてキュプラの質感に似ているので、どんな違いがあるか気になっている人も多いと思います。
その違いについても、お話ししていきましょう。
レーヨンはキュプラと同じく再生繊維の1つで、原料は木材パルプです。
シルクに代わる生地として開発され、光沢感や調湿性、しなやかさはキュプラと同様ですが、レーヨン繊維はキュプラよりも太く断面には凹凸があるため、キュプラと比べると滑らかさはやや劣ります。
ポリエステルは、石油から作られるポリエチレンテレフタレートを原料として、化学的に合成された合成繊維であり、ペットボトルの原料としてもよく知られる化学物質です。
速乾性に優れ、型くずれしにくく、摩擦に強くシワになりにくい特徴があります。
ただし、キュプラと異なり、吸湿性が低く、静電気が起こりやすい点がデメリットです。
肌触りなどの風合いもキュプラより硬いです。
キュプラはどんなものに使われている?
さて、実際にキュプラは何に使われているのでしょうか?
キュプラはレーヨンと似た用途が多く、スーツ・背広の裏地、その風合いから婦人服にも多く使われており、シャツやスカート、ワンピースなど生地の特性を活かした衣類に使われています。
また、スカーフや下着、和服や和装小物に使われることもあります。
衣類以外では、インテリア繊維としてカーテンや座布団、布団類などにも使用されています。
キュプラと他素材との混紡生地もあり、その場合は衣類を中心に使われることが多いです。
適度な厚みがありオールシーズンで使えるキュプラ/コットンの混紡生地や、シワになりにくく水洗いにも強いポリエステルとの混紡生などがあります。
キュプラの取り扱いの注意点は?家庭でのお手入れ方法を詳しく!
上述のデメリットにて記載しましたが、キュプラは水に濡れると多少伸縮してしまうという欠点があり、水洗いには注意が必要な生地です。
クリーニングに出すのが無難ですが、家庭でもお手入れをしたい!という場合は、ご紹介する方法で進めてみてください。
取り扱いの注意点についても、あわせてお伝えします。
キュプラ製品の洗濯方法
まず、衣類の内側についている洗濯表示を確認してみましょう。
衣類の内側タグを見ることで、キュプラ100%なのか、混紡生地素材なのかわかります。
洗濯に対しての取り扱い方法についても記載があるはずです。
手洗いマークが付いている衣類に洗濯機を使うと、シワ、縮み、摩擦により毛羽立ちの原因になりますので、ご注意を!
キュプラ製品の場合、洗濯表示の下に「手洗いは水温30℃以下をおすすめします」などの記載がされていることが多いです。
洗う際にはぬるま湯を使い、優しく手洗いをしましょう。
また、洗剤は中性洗剤をお使いください。
すすぎの際も同じくらいの温度のお湯を使う方が良いです。
脱水はバスタオルで衣類を押えるようにして水分を取り、洗濯機を使用する場合は洗濯ネットに入れて10秒程度にしましょう。
最後に干し方ですが、日陰干しをおすすめします。
キュプラ製品を取り扱う際の注意点
キュプラ製品にはアイロンマークが付いている場合があります。
具体的アイロンの温度が記載されていることもありますが、低温、中温、高温などの表記の場合もあります。
低温は80~12℃、中温は140~160℃、高温は180~210℃です。
キュプラの場合は中温表記が多いですが、タグの表記に準じてアイロンをかけるようにしてくださいね。
また、タグについている表記で×が付いているものは、やってはいけない取り扱いとなりますので、行わないよう注意しましょう。
その他、塩素系及び酸素系漂白剤の使用NG、タンブル乾燥のNGなど表記がある場合もあります。
大事な衣類を長く風合いを保ち使用するため、付いているタグの表記に沿った取りをしてくださいね。
キュプラの特徴を確認し、活用・購入の参考に!
今回はキュプラについて、解説させていただきました。
キュプラは衣類を含め私たちの身の回りに使われている身近な繊維の一つで、天然素材を原料に作られている「再生繊維」です。
原料には、綿の種(コットンシード)に付いた産毛部分のコットンリンターが使われており、生分解性が非常に高い特徴があります。
環境にやさしい素材である他、柔らかくドレープ性に富む、肌触り滑らか、静電気が起こりにくい、シワになりにくい、吸湿性・放湿性がある、紫外線による変色が少ない、染色性に優れている、生地強度があるなど、たくさんのメリットがある素材です。
ただし取り扱いには注意が必要な繊細な素材なので、ご紹介した注意点も参考に大事に扱ってくださいね!
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