こんにちは、岡畑興産靴受託事業の伊集院です。
「再生繊維」と言われるとどのようなイメージをお持ちでしょうか?
再生という名前から、何かを再利用して作られるものというイメージはつきそうですが、それが何かというのはなかなか想像が難しいかと思います。
今回は「再生繊維ってどんなもの?」という点や、実際にはどんな素材が再生繊維なのかということをご紹介します。
目次
再生繊維とは?再生繊維にする理由って何?
再生繊維というのは、その名前の通り元々ある物質を化学反応や熱によって一度溶かし、再び繊維として蘇らせたものの事を指します。
この再生繊維は大きく分けると「天然由来の再生繊維」と「化学由来の再生繊維」の2種類があり、原材料によってさらに細分化されます。
なぜ、わざわざ再生繊維にする必要があるのかを天然由来・化学由来の観点からメリットをご紹介したいと思います。
天然由来の物を再生繊維にする理由
絹、綿、麻、珍しいところでは木の皮などの天然由来の素材は、昔から衣類や小物などに広く使われてきました。
これらの天然繊維は環境には優しいけれど、化学由来の素材と比較して強度が弱いものが多く、靴などの製品には向かないという弱点がありました。
これは天然素材の繊維が短繊維と呼ばれる非常に短い繊維質を持っていることが原因でもあります。
コットン製品を引っ張ったときに、簡単にぶちっとちぎれて細かな綿毛のような繊維が取れるかと思いますが、これが短繊維で物性的に弱い原因でもあります。
再生繊維は、これを化学的に溶かして再度紡ぐことで短繊維から長繊維にし、強い物性を持ちながら、天然繊維の良さもそのまま保持させるという画期的な素材の生成方法なのです。
化学由来の物を再生繊維にする理由
化学由来の物を再生繊維として活用する大きな理由は、やはり環境に配慮しているという部分が大きいかと思います。
ペットボトルも中身を飲み切ってしまうとボトルはごみとして捨てられてしまいます。
化学由来の再生繊維は、使用後に捨てられるだけだったペットボトルを再利用し、新しい繊維へと生まれ変わらせるのです。
再生繊維の種類とは?種類ごとの特徴もチェック
様々な種類がある再生繊維。
原料や製造方法によって、繊維の名前が変わります。
いくつか代表的な再生繊維を、その特徴と合わせてご紹介いたします。
レーヨン
木材パルプを原料として生成されるレーヨンですが、元々は絹の代替品として開発された再生繊維です。
レーヨンは吸湿性が非常に高く、汗やそのにおいを吸収してくれるため、肌触りが良いのが特徴です。
また、絹の代替品として作られるだけあり、光沢感や高級感がある再生繊維でもあります。
水に濡れている状態では強度が弱くなる特性があり、シワになりやすいという欠点があります。
リヨセル
リヨセルもユーカリの木材パルプが原料となっている再生繊維ですが、レーヨンの弱点である濡れた状態で強度が落ちる点を改善した再生繊維です。
表面感はレーヨンと同じく光沢感があり、絹の様に高級感があります。
また、レーヨンと同じく吸湿性があるので、汗やそのにおいを吸収します。
白化と言われる表面が白くなる現象が発生しやすく、他の種類の再生繊維と組み合わせて使用する場合、リヨセルの部分だけ白く見えてしまう欠点があります。
キュプラ
コットンの種の産毛から生成されるキュプラですが、他の再生繊維と同じく吸湿性が高く、肌触りがとても良い素材です。
キュプラを使うことで環境に配慮した製品を作ることができます。
古着や古い靴が埋め立てられて、分解されず残ってしまうことが環境問題として取り上げられていますが、キュプラは生分解性が非常に高く、土に埋めておくと最終的に土壌内の微生物によって分解されます。
土に還るというエコフレンドリーが、最大の特徴だと言えるでしょう。
欠点としては、他の再生繊維と同じく、水に弱く濡れている状態では強度が落ちることが挙げられます。
ポリノジック
木材パルプを原料としていて、特徴はほぼレーヨンと同じと言っても良いでしょう。
ただ、レーヨンよりも吸湿性が悪く汗を吸いにくい欠点はありますが、濡れた状態での強度の低下はレーヨンよりも低く、日常使いがしやすい再生繊維です。
外観は、レーヨンと同様に表面に光沢感があり、高級感があります。
ポリエステル繊維
ペットボトルを溶かして再利用することで作られるポリエステル繊維は、化学由来の再生繊維に分類される素材です。
自然由来の再生繊維に比べると強度が高く、濡れた状態でも強度が下がりません。
石油由来の原材料を使用しているため、自然由来のものと比べると環境負荷はあります。
土に還ることはないですが、使用済みペットボトルの再利用という点では、SDGs的な素材と言えます。
再生繊維を使うメリット・デメリットは?
再生繊維を使う代表的なメリットは、環境配慮ができるという点です。
自然由来であったりリサイクルペットボトルの再利用など、地球に優しい素材が再生繊維です。
焼却してもほとんど有害物質が発生しないため、活用することで環境改善に貢献できるでしょう。
また、基本的に吸湿性や放湿性が高く、熱に強いという点も魅力です。
デメリットは強度不足や水に弱い点で、取り扱いや着用シーンが限定されるかもしれません。
メーカーやブランドもその特性を理解したうえで、使用するシーンに合った再生繊維を選択したり、時には合成繊維を選択しています。
濡れた状態で摩擦を加えると繊維が傷みやすいため、洗濯の際は強く擦ることは避けましょう。
再生繊維以外の化学繊維もチェック
再生繊維についてご紹介してきましたが、再生繊維は全般的にどうしても強度や濡れた状態に弱いという弱点があります。
ある程度の強度が必要な普段使いでは、合成繊維と呼ばれる石油由来の素材を使用することが多くあります。
再生繊維を除いた代表的な石油由来の合成繊維も、いくつかご紹介したいと思います。
アクリル
羊毛に近い風合いがあり、軽い。
吸湿性がなく、高温に弱い特徴がある。
ポリウレタン
伸縮性があり、着心地が良い。
紫外線で黄変することがあり、経年劣化によって脆くなってしまう。
ナイロン
シワになりにくく、汚れに強い。
熱に弱く、熱源が近いと溶けて穴が開いたりしやすい。
ポリエステル
速乾性があり、型崩れしにくく強度がある。
吸湿性がなく、汗を吸い込むなどの機能性は期待できない。
再生繊維とは地球環境に貢献できる素材!ぜひチェックしてみて
再生繊維とは、元々ある物質を化学反応や熱によって一度溶かし、再び繊維として蘇らせたものです。
再生繊維の種類には、大きく分けると「天然由来の再生繊維」と「化学由来の再生繊維」があります。
その中でも細分化されており、レーヨン、リヨセル、キュプラ、ポリノジック、ポリエステル繊維などが代表的です。
皆さんが持っている洋服や靴にも、今回ご紹介したような再生繊維が使用されているかもしれません。
製品についているタグを見て、「なるほどこの製品にはこんな素材が使われているのか?」と発見してみてはいかがでしょうか?
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