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2024.04.01

カルチャー

祖父のスニーカー

  • #社内
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岡畑興産では、1997年から社内報「GAZETTE」を毎月発刊しております。

加えて、2018年より、社内表彰をリスタートし、「Okahata Awards」にて、その年の「Best GAZETTE」を表彰しています。

2023年度「Best GAZETTE賞 1位」をご紹介します!

祖父のスニーカー(靴受託事業/田中)

私には、御年86歳を迎える母方の祖父がいる。昔に比べ、歩くスピードも遅く、飲む薬こそ増えてきているが、未だに中華のコース料理を完食し、紹興酒を飲み干すほどの元気さは残っている。今回はそんな祖父との出来事を話したいと思う。

私が岡畑興産に入社して、自分が担当したと言える初めてのブランド、R社のウォーキングシューズ。いろいろなモデルに携わらせて頂いたのだが、その中にとても成功とは言いがたい、想定よりミッドソールが硬くあがってしまい、履き心地があまり良くないとされるモデルがあった。さらに後々アウトソールのラバークラック問題等々が起き、不良の見解書を何度も提出した、あまり良い思い出のない靴。

そんな靴になるとは知らない当時の私は、あろうことか、社会人になった自分の仕事とは何かを説明する意味も込めて、嬉々としてその靴を祖父にプレゼントしたのである。その時はあまり嬉しそうな顔は見られず、アッパーにファスナーが付いた靴なんて年寄り感が出すぎて嫌だったかな? などと勘ぐったものだが、それ以来、会う度にその靴を履いている足元を見て、なんだ、嬉しかったんじゃん、と大人になり喋る機会が段々と減ってしまっている祖父と、靴を介して通じ合っているような、そんな気分にさせてくれた私にとって良くも悪くも思い出深い靴と言える。

それはもう6、7年も前の話で、そんなことも忘れかけていたつい先日、私は驚きの光景を目撃した。家族ぐるみで付き合いのあった近所のおばあちゃんが亡くなり、お葬式に参列することになったので、足早に会場に入り席に着くと、先に来ていた祖父が焼香をあげるために立ち上がっている瞬間だった。その足元を見ると、葬儀場ではやたらと輝くように目立つ、白い物体が見えた。その正体は白のEVAミッドソールだった。えぇ! いくら足が悪いとは言え、さすがに黒めの靴あったろ、斎場で白はこんなに目立つのか、などと恥ずかしい気持ちになっていたら、なんとびっくり、よく見ると私があの時にプレゼントしたスニーカーではないか!! まだ持ってたのか!! かれこれ7年くらい履いてるのか、加水分解とかで怪我しないかな、とお坊さんのお経が耳に入ってこないほど、気づくと祖父の足元に気を取られてしまっていた。

隣にいた母にこっそり聞くと、ボロボロではあるが壊れてはおらず、いまだにヘビロテしてくれているらしい。何もお葬式にまで……、という驚きと、その場では不謹慎だがちょっぴり嬉しい気持ちと、故人との最後のお別れの寂しい気持ちが入り交じり、焼香の作法を間違える始末。慌ただしく焼香を終え、少し気持ちが落ち着いてくると、年齢的に祖父との時間も残り少ないんだよな、近い将来、これを祖父のためにやる日が来るのだな、というあまり直視したくない未来について考えさせられた。そうなる前に、早く祖父に新しい靴をまたあげようと心に決めた。

でもいまFPG(靴受託事業)ではファスナー付きの靴って生産してないよなぁ、仕事とは関係なく、新しい靴を買ってあげるかぁ、などと思いを巡らせていたその矢先、妻からLINEが一通、“娘の新しい上履き買いました”。あれー? つい最近買ったばかりなのに、子どもの成長ってホントに早い、今の靴もまだまだ綺麗だろうに。かたや祖父は同じボロボロの靴を7年……と、時が経つ喜びと残酷さを同時に思い知る、嬉しさも悲しさも同時に感じた一日だった。が、改めて自分が父としてではなく子として、孫としての時間を後悔のないように精一杯大事にしていこう、と忘れかけていた気持ちを思い出させてくれた、そんな一日にもなったのである。

いやぁ、家族って本当にいいもんですね~
 


 
田中さん、ありがとうございました。
改めて、一日一日を大切に過ごす大切さを再確認させられますね。

ちなみに、2022年度「Best GAZETTE賞 1位」はOKK/張さんでした。
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