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2026.07.08

ハーモセント技術事例 / 合同会社ウチノ様 香料により「ゴムの臭いがこもらない」ジム用ゴムマットを実現!

ハーモセント技術を取り入れたGYMMATの試作品を手にするウチノ代表・田村智之氏
 

返品理由のひとつ「ゴムの臭いがこもる」をなんとかしたい

東京にある合同会社ウチノ様(以下:ウチノ社)は、アメリカ、ドイツのフィットネス器具を取り扱う輸入販売会社。海外トップメーカーの機器輸入以外にも、国内利用者のニーズに合わせた自社ブランド製品の開発と販売を手がけている。

ウチノ社から臭いのお困りについて問い合わせが寄せられたのは、2025年2月末のことだ。同社ではオリジナル製品として、商業ジムやホームジム向けのラバーマット「GYMMAT」を販売しており、衝撃吸収性の高さが利用者から高い評価を得ていた。

滑り止め加工が施されたEPDMラバーシートを採用したトップレイヤーは、ベンチプレスやランジ動作においても滑らず踏ん張ることができる。ゴムチップ(再生ゴム)からなるボトムレイヤーは防振性に優れ、バーベルやダンベルのドロップにおいても、高い強度を保つ。PAHs(多環芳香族炭化水素)、SVHC(高懸念物質)、ホルムアルデヒドなどのテストに合格しており、安心して活用できる点もフィットネス業界から選ばれる理由のひとつとなっていた。

その一方で、一部の購入者からは「ゴムの嫌な臭いが部屋にこもりやすい」という声が寄せられていた。

「臭いのもとはボトムレイヤーに使用している再生ゴムチップです。とくにホームジムの場合、部屋の面積が狭いために臭いがこもりやすい傾向があります。商業ジムではゴムの臭いを紛らわせるために、アロマやフレグランスのディフューザーを設置しているところも多く、その維持管理にコストがかかることが課題となっています」とウチノ社代表の田村智之氏は説明する。

これらの課題を解決するため、ウチノ社では2つのアプローチを検討した。ひとつは素材自体をウレタンなどに変更すること。もうひとつは、既存のゴムの臭いを何らかの方法で減少させるというものだった。

解決策を探るなかで、田村氏は岡畑興産のウェブサイト上にあった「ゴムの臭いをハーモセント技術で改善した事例」を見つけ、問い合わせに至ったという。

杉並区高井戸にある「ウチノジム東京ショールーム」では取り扱い製品を体感することができる(予約制)
 

無臭は存在しない。自然の香りに含まれる悪臭を活かす「ハーモセント技術」を説明

初回の打ち合わせでは、「ハーモセント技術」についての説明を行った。人が不快と感じる臭いの原因である再生ゴムチップの素材(臭い)に適したハーモセント香料を加えることで、不快な臭いを包み込んで目立たなくさせることができる。これは、長年香りの研究に取り組んできた花王株式会社(以下:花王)が独自に開発した「感覚消臭技術」だ。一般的に用いられている、強い芳香で悪臭を覆い隠すマスキング技術とは異なり、心地よいと感じる香りで効果が期待できる点がハーモセント技術の大きな特徴だ。

実は自然の香りには、もともとごくわずかに悪臭成分が含まれている。たとえば日本人に馴染みの深い緑茶の成分にも、悪臭成分が5〜10%含まれているという。また科学的には、絶対的な意味での「無臭」はほぼ存在せず、私たちが意識しないまでも、なんらかの香り成分が含まれている。そのため、悪臭対策のご要望として「無臭にしてほしい」というお声が寄せられることが多数あるが、それは技術的に難しく現実的ではない。


 

ゴムの品質に影響しないことが採用の決め手に

田村氏からは、「ゴムマットの強度や耐久性など物理的性能を低下させないで臭いを改善することはできるのか?」という不安要素が挙げられた。

「気になる臭いを抑えることで、製品強度などの性能が低下してしまうことは避けたいと考えていました。しかし、ハーモセント技術では、取り組み事例において、ゴムの物理的性能への影響は確認されなかったとの説明を受けて安心しました」(田村氏)

初回の打ち合わせを終えたのち、岡畑興産から “人が心地よいと感じる” 香りのサンプルをウチノ社に複数提供した。そのうち2つの香りでサンプルを製作し、最終的にひとつの香りを選んだ。

「私たちが販売する際には、1種類の香りに絞りたいと考えています。その理由は、種類が多いとお客さまが迷ってしまうからです」(田村氏)
 

岡畑興産が中国の工場に赴いて丁寧にサポート

ウチノ社オリジナルの「GYMMAT」は、毎月のようにコンテナ単位で輸入している人気商品だ。製造を手がけているのは、中国のゴムマットメーカーA社。岡畑興産はA社と協業で製品開発を進めることになった。

「A社は、中国のなかでもっとも品質管理が優れているゴムマットメーカーだと聞いています」と、同件を担当する岡畑興産・機能化学品事業部の佐藤隆薫は語る。

さっそくA社に赴いてハーモセント技術について説明したところ、再生ゴムチップに香料を添加することに難色を示した。その理由は2つある。ひとつは、生産量の多くを占める欧州や中東向けの製品では臭いのクレームがないこと。もうひとつは、香料の添加により、強度の低下や接着剤への悪影響など品質劣化への懸念が拭えないことだった。
 

パートナーの不安を「実績×専門性×現地サポート」で取り除く

こうしたA社の不安を解消するため、岡畑興産では3つのアプローチを行った。

1)日本での実績を示す
日本の大手合成ゴムメーカーにおいて同様の香料を添加した際にも、物性には一切影響がなかったことをデータで示した。

2)素材特性による安定性
香料はゴムと親和性の高い油性。素材に馴染みやすく、持続的な香り効果を発揮することを説明した。

3)ワンストップでのサポート体制
化学薬品の専門商社としての知見を活かして、化学品の複雑な輸出入の手続き、上海にある現地法人スタッフによる工場への直接の納品、さらに現場での具体的な混合方法(攪拌時間など)の指導などを一貫してサポートすることを伝えた。これにより、生産工程以外では工場側の負担を発生させない体制が構築できる。

「水性や固形の素材だとゴムにうまく馴染まないんです。その点をA社では懸念しておられたのですが、ハーモセント香料は油性なのでゴムに非常に馴染みますし、物性も劣化しないということで、ご理解いただけました」(佐藤)
 

含有量の判断は経験値によるところが大きい

2025年6月、A社にて試作を行った。

「添加する香料はとても少量です。一度試してもらうのがいいと思いましたので、私を含めて日本から2名、現地スタッフ1名で工場に伺い、香料の取り扱い方法などをレクチャーしました」(佐藤)

ゴムに香料をどれだけ添加するかという判断は、経験値によるところが大きい。岡畑興産ではこれまでの実績からノウハウを蓄積しており、0.1%単位で添加量を見極める。

「香料を正確に計量してもらうよう指示しました。再生ゴムチップに混ぜた後は、攪拌して均一にしていきます」(佐藤)

中国の製造工場にて。試作の様子
 
今回は0.5%と0.3%の含有量で試験を行った。試作段階では、手作業によりゴムチップに香料を練り込んでいく。香料を練り込んで攪拌したゴムチップを型に入れ、表面を平らにならしてからプレスし、熱を与えて固める。

ハーモセント香料を練り込むのは再生チップを使ったボトムレイヤーのみだ。表面のシートは再生品でなく不快な臭いもないため、香料は練り込まない。
 

ゴム臭の経時変化に合わせた香りの調整にも対応

2025年6月、最初の試作品が完成する。それをウチノ社にお渡しして、7月から10月までの3ヶ月間、長期評価をお願いした。今回は、個室に試作品のゴムマットを敷いて、香りの変化を観察していくという方法を取った。

その結果、時間の経過に伴い、添加していた“心地よい香り”が変化していることが判明する。生産直後のもっともゴム臭が強い状態に合わせて香料選定を行ったため、3ヶ月が経過してゴム臭が落ち着いたことで、少し違和感が生じるようになったのだ。これらを解決するため、ゴム臭が強い状態から落ち着くまでの経時変化に合わせた香料の再選定を行うことにした。

香りは感知する場所や対象物との距離、時間などで変化する。どのような条件下で悪臭解決を行いたいのか、それぞれの条件に合わせて最適化できるのがハーモセント技術の利点だ。

1ヶ月後、新たに調香した香料が出来上がり、中国へ送付した。2026年1月、A社の工場で実生産がスタートする。

「香料そのものは日本で調合して製造しています。それを中国に持っていく際、化学薬品なのですごく手間がかかるんですね。当社が化学品の専門商社だからできることであり、そこが大きな強みと言えます。日本から中国に送ったあと、現地法人スタッフが工場まで運びますから、現地の製造工場の手を煩わせることもありません」(佐藤)

法的に中国へは持ち込めない化学物質があることから、花王による調合作業では、化学品組成に留意した香料設計を行っている。

経験豊富な調香師たちが在籍する研究所を有し、科学的エビデンスに裏打ちされた技術力を提供する花王と、悪臭に関するご相談から海外生産のサポートまでワンステップで行う岡畑興産。両社がタッグを組むことで、悪臭という社会課題に対して、各現場に即した答えを導き出すことができる。

2026年夏には、ハーモセント香料を活用したGYMMATが完成し、「AROMAT®」という新しい商品名で発売される予定だ。まずはタイル型ゴムマットを販売し、秋以降にはスロープやロールマット、ジョインマットといった既存の製品をAROMAT®シリーズとして展開していく見込み。

「AROMAT®」はユーザーの方々にどのように受け止められるのか。後日あらためて追記したい。
 
■合同会社ウチノ 公式ホームページ
https://uchinogym.com

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