2022.04.04
高吸水性ポリマー とは?その特徴や用途について詳しく解説!
岡畑興産の吉江です。
「高吸水性ポリマー」と聞いて皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。
なんだか難しい言葉ですが、私たちの身近な製品に使われている「高吸水性ポリマー」。
代表的なものでは紙おむつに使われ、土木工事では止水目的で使われています。
今回はそんな「高吸水性ポリマー」について、特徴や用途など詳しく解説させていただきます。
目次
高吸水性ポリマーとは?吸水する仕組みも解説
まずは基本情報からご紹介。
- CAS番号:9003-4-7
高吸水性ポリマーはSAP(Super Absorbent Polymer)とも呼ばれ、自重の100倍〜1000倍の水を吸水できる高い水分保持性能を有するように設計された高分子です。
水を吸水する材料としては古くから脱脂綿・パルプ・布などが用いられてきましたが、これらの材料は毛細管現象によって基材の間隙に水を吸水するのみで、吸水量も小さく、圧力によって水が簡単に押し出されてしまうものです。
1974年に米国農務省の研究所が澱粉誘導体の研究中に約1000倍の吸水力を有する高分子を合成。
その後に用途開発が進んでポリアクリル酸系等の種々の組成を有する高分子が開発され、「高吸水性ポリマー」と呼ばれるようになりました。
高吸水性ポリマーは高分子の長い鎖が絡み合った状態をしています。
水と触れると高分子の網が広がり、この網目に水が閉じ込められることで、高い水分保持性を示します(以下参考図)。
このような吸水の仕組みにより、一度吸収した水はほとんど外に出されません。
高吸水性のポリマーの用途もチェック!
高吸水性ポリマー(SAP)の用途は多岐にわたりますが、今回はその一部をご紹介いたします。
- 衛生用品:紙おむつ、ナプキン
- ペット用品:ペットシート
- 食品・流通:保冷用ゲル剤
- 農業・園芸:土壌保水剤、育苗用シート
- 日用品:使い捨てカイロ、ゲル芳香剤
- メディカル:廃血液固化剤
また、土壌改質の際にも高吸水性ポリマーは用いられます。
例えば、水分を多く含んだ泥土は運搬や保管は困難ですが、高吸水性ポリマーを活用して運搬可能な硬さに土壌を改質できます。
この中でもとくに多く使われている「衛生用品」と「保冷用ゲル剤」について、どのように活用されているか、もう少し詳しく見ていきましょう。
衛生用品
現在、高吸水性ポリマーは子供用、大人用、ペット用の紙おむつで一番多く使用されています。
初期の紙おむつはその吸水層が粉砕パルプのみで構成されていたため、その厚みが大きく、使いにくさがありましたが、高吸水性ポリマーが使われるようになってから、紙おむつの厚みを1/3以上減らすことができました。
最近は「Ultra Slim」と呼ばれる紙おむつも開発され、着用感がより改善されています。
ちなみに子供用の紙おむつには高吸水性ポリマーが約10g/枚ほど使用されており、大人用は約15g/枚ほど使用されています。
紙おむつに使用される高吸水性ポリマーとしてクリアするには、幾つかの特徴が必要となり、水を吸水する特徴以外にも吸水速度や外部からの圧力に対して水を保持する性質が必要です。
*高吸水性ポリマーと水を吸水して膨潤した様子
保冷用ゲル剤
高吸水性ポリマーが水により膨潤すると、ゼリー状のハイドロゲルになります。
なぜ、保冷用に水(氷)の代わりにこのハイドロゲル(Hydrogel)という冷媒を使用するのかご存じでしょうか。
ハイドロゲルは凍ると氷よりも溶けるのが遅いため、徐々に溶ける性質を利用して保冷用ゲル剤に使用されています。
各物質には対流現象(温かいものは上に、冷たいものは下に移動する熱交換作用)があり、物質の内部での循環が早いと熱交換が良くなることで早く溶けます。
ゲルタイプの物質は循環が悪く、熱交換も悪いのでゆっくりと溶ける性質があり、冷気を長持ちさせることができるため、高吸水性ポリマーのゲルは保冷剤に適しているのです。
環境を考えたバイオバランスの高吸水性ポリマーも開発されている
高吸水性ポリマー(SAP)は、一般的には原油から製造したアクリル酸に苛性ソーダを加えて重合させたものが多く用いられています。
最近は環境に及ぼす影響を考え、バイオ原料を使用した高吸水性ポリマーも市場に出始めています。
代表的な物が「バイオバランスSAP」であり、再生可能な植物性原料(Bio-renewable feedstock)と化石原料(Fossil-based Oil)を一緒に使用して開発されたSAPです。
このように開発されたバイオバランスSAPは、既存製品と比べて炭素排出量を減らすことができ、国際環境バイオ原料の認定であるISCC(International Sustainability & Carbon Certificate)PLUSも獲得しています。
製品の製造工程を含めて製造業及び流通業まで、全ての過程にある関係会社が認定を受けることで最終製品にISCC認定の表記ができます。
バイオバランスSAPは植物性オイルから抽出した再生原料を使用していますが、肉眼で見た外形や性能面でも既存のSAPと差はありません。
炭素を節減し環境にも優しく、性能面でも既存の高吸水性ポリマーと同等の性能を有していることでバイオ経済分野でも大きな注目を集めています。
今日の素材を判断する基準は、持続可能性が一つの大きなテーマとなっています。
未来の地球環境のために、今後もバイオ素材の開発に期待をしたいものです。
高吸水性ポリマーの特徴や用途を知って様々な活用を!
私たちの周りにある様々な製品や土壌改質等で使われている高吸水性ポリマー。
SAPとも呼ばれ、自重の100倍〜1000倍の水を吸水できる高分子です。
高い水分保持力を有していることで多くの用途があります。
紙おむつやナプキン、ペットシート、保冷用ゲル剤、土壌保水剤、育苗用シート、使い捨てカイロ、ゲル芳香剤、廃血液固化剤などに活用されており、土壌改質の際にも用いられることが多いです。
近年では、炭素を節減することができ、環境にも優しく、既存の高吸水性ポリマーと同等の性能を有している「バイオバランスSAP」も登場しています。
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