ヒールカウンターの役割
皆さん、突然ですが、靴の踵周辺って硬いですよね、これは外から見てもわかりませんが、靴の外側の素材と内側の素材の間に、硬い芯となる材料が入っているからです。この芯材をヒールカウンターといいます。
このヒールカウンターは、踵の保護、歩行の安定性、靴の履き口の形状保持など役割を担っています。
靴は総合的にできていますので、ほかの部材や構造などとの連携で足をサポートしていますが、ヒールカウンターはその重要な役割を担っている部材の1つです。
そんな理由で、ヒールカウンターは基本的に硬くなければなりませんが、最近ではカウンターの無い靴もあります。 踵の安定性が悪いので、用途を間違えるとうっかり怪我につながることもあります。
ヒールカウンターが硬くても、設計がしっかりとしていれば問題ないのですが、くるぶしとの関係性もあって、カウンターが高すぎるとくるぶしに当たってしまい、我慢して履いていたら、皮がむけて血が出たなど、皆さんも経験があるかもしれません。
本来、ヒールカウンターはくるぶしを包むように、保護する設計でなければなりません。痛くなる靴は設計が良くないか、製造での個体差という不具合かもしれません。
ヒールカウンターの素材いろいろ
ヒールカウンターの素材は色々あります。
●タンニン鞣し(なめし)の革
昔はなめした革を手作業で漉いて使っていました。ほどほどの硬さと加工のしやすさがあるのですが、素材自体が高価なため、今はあまり使いません。(高級革靴などでは、今でも使われています。)
●成形カウンター
モールドを使って作る樹脂製のヒールカウンターです。 木型にぴったりと合わせることができます。 金型作製の投資が必要ですが、継続して長く使うような定番の靴には向いています。
●アウトカウンター
靴の中に入れるのではなく、アッパーパーツとして踵外側に取り付ける主に樹脂製のカウンターです。 色や形でデザイン性も出せる一石二鳥のカウンターですが、金型が必要で、成形カウンターのものよりも費用が掛かります。
●フラットカウンター
一番よく使われています。現在のヒールカウンターの主流と言えるでしょう。サーモプラスチック(熱可塑性樹脂)シート状の素材を裁断して使います。 裁断するための抜き型は靴ごとに作ります。裁断型は安価のため、費用が抑えることが出来ます。
サーモプラスチック素材は熱をかけることで柔らかくなり、冷やすと硬くなります。熱をかけて木型に沿った形にくせづけするイメージでしょうか。。
多品種に対応しやすいため、一番多く使われています。
主流はフラットカウンター
今の主流はフラットカウンターです。
フラットカウンターは厚みもいろいろ。婦人用靴には0.6~1.0mmくらい、紳士には0.8~1.5mmくらいに厚みのものが使われます。
厚みがあるほど硬くなります、厚みは人間の体重に比例して、男性の体重は重く、その分強度が必要なことから男性靴には厚いもの、婦人靴では薄いものが使われます。
足のくるぶし側は裁断後に漉いて薄くします。漉きはだいたい10mm幅で、上に行くにしたがって厚みが0mmになるように漉いていきます。このようにすることで、カウンター材の段差が、靴の外側にひびかない工夫です。靴の履き心地にもソフト感が出るのです。
カウンターは足の内面を長く設計しますが、土踏まずに向けて足の内側をカウンターでサポートするためです。
最近は内外同じ長さの多くなっています、これは靴の構造や別のパーツで土踏まずなどの足の内側サポートに対応しているからです。
靴に限らずですが、ものづくりは、材料・構造・組み立て順番を、理詰めで考えて、作られています。
カウンターも同様で、靴の用途、構造、そしてコストなどから、種類、設計、素材、厚み、硬さを決めていきます。
フラットカウンターの成形
昔ながらの靴づくりでは、木型に長い時間入れて、靴の成形(形づけ)をしていました。
今は、靴の縫製アッパーにカウンターを取り付け、まずHOT成形機で熱をかけて、しっかり成形し、その後すぐにCOOL成形機にかけて、冷却しながら形を固定させます。機械から外すと、踵周りは靴の形にしっかりと変わっているわけです。
近代は技術が進み、色々な素材の特性を活かしたり、製造機械を開発したりと、靴においても技術の進歩が常にあるのです。
少し長くなりましたが、ヒールカウンターは靴の踵周りにおいての重要な影の立役者です。(アウトカウンターでは表に出ていますが…)
靴専門商社である我々は、靴の知識を知らないとお客様の要望に応えられません。
工場へ赴くことで、新しい製靴技術を目の当たりにしながら、日々学び、励んでいます。
それでは皆さま、最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
靴の伝道師として今日も営業に行ってきまーす。
(書いた人: デザインも描けるちょっととぼけた技術系営業S)