こんにちは。岡畑興産のはなです。
世界中で異常気象が頻発しているとニュースで報じています。大雨、洪水、季節外れの真夏日、真冬日。
まだ5月なのにクーラーを付けないと眠れない…など身に染みて感じている人も多いのではないでしょうか。
世界気象機関によると実際にここ50年で、異常気象とよばれる現象が5倍に増えているそうです。
このような地球環境において、さまざまなエコ商品が開発されていますが、本当にそれは良い影響を与えるものなのか、細かく評価をしてくれる手法が「ライフサイクルアセスメント(LCA)」です。
今回は「ライフサイクルアセスメント(LCA)について、詳しく解説します!
実際にどう調べているのかや、実施するメリットなどもご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね!
目次
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは?
気候変動には大気や海太陽活動の変動などの自然によるものと、オゾン層破壊・地球温暖化などの人為的活動によるもの2つの要因があります。
私達も電化製品を購入するときには省エネモデルを選ぶなど、個人レベルでも環境を考えた消費をしたいと考えている人は多いと思いますがが、電力消費を抑えていても、その製品を作る段階、輸送段階、処分段階ではどうでしょう?
実はその過程では電力を大量に消費しているなど、トータルで見るとエコではない場合もあるんです。
製品やサービスのライフサイクルは、原料調達・生産・使用・廃棄と大きく分けることができます。
ただ、もっと細かく見ると原料調達には原料生産、運送などの過程があり、製品の生産には加工、組み立て、運送などがあり、製品を使用するまでにも梱包や運送、販売など多くの過程を踏んでいます。
もちろん、使い終わった後の処分でも。
そういう過程全てから排出される環境負荷を定量的に捉え、評価する手法が「ライフサイクルアセスメント(LCA)」です。
簡単にいうと、製品やサービスが生まれ、使い終わり処分されるまでに、どれだけ環境に影響を与えているのかを可視化する手法です。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の実施手順
ライフサイクルアセスメント(LCA)は国際規格として、ISO14040シリーズでその手法が規格化されています。
その手順を説明しましょう。
1. 目的及び調査範囲の設定
【対象製品・サービスは何か】【環境問題として何に関する評価をするのか】などを明確にします。
2. インベントリ分析(LCI)
1で設定した調査範囲のライフサイクルの各段階におけるデータのインベントリを作成して分析します。
ライフサイクルインベントリ(LCI)は簡単にいうと、環境負荷に関する項目の出入明細のようなものです。
3. ライフサイクル影響評価(LCIA)
ライフサイクルインベントリ分析(LCI:ライフサイクルインパクトアセスメント)をもとに、CO2排出量などが環境にどれだけ、どのような影響を及ぼすのかを定量的に評価します。
4. 結果の解釈
解釈ではインベントリ分析(LCI)とライフサイクル影響評価(LCIA)の結果を、LCA調査の目的に照らして評価します。
LCA結果の解釈は「重要な項目の特定」「結果の確実性と信頼性の評価」「結論及び調査依頼者への提言」の3つからなっています。
1.重要な項目の特定:設定した項目に対して何がどこのくらい影響があったのか、特に大きな影響に対して特定する
2.結果の確実性と信頼性の評価:結果/データに間違いがないかチェックする
3.結論及び調査依頼者への提言:ライフサイクルのどの過程でどのような問題があるのかを明確に提言する
ライフサイクルアセスメントの重要性や実施するメリットを確認
誰もが環境を汚す製品を使うことや、環境をないがしろにしている企業の製品を使うことには抵抗があるでしょう。
環境を保護し、サスティナブルな世の中にすることはとても重要な課題です。
実は「グリーンウォッシュ」といって、環境に貢献しているように見せかけて、事実が伴わっていないという問題が起こったことにより、環境への影響を正しく評価する手段としてライフサイクルアセスメントが注目されるようになりました。
消費者は、企業がきちんと環境問題に取り組んでいるのか?
この製品はサスティナブルな材料を使っているのだろうか?
というようなことを購入動機とすることが増えています。
企業はSDGsに取り組んでいるということだけでなく、「適切に」取り組んでいるかという点も、積極的にアピールする必要も出てきているのです。
ライフサイクルアセスメントの評価を受けることで、消費者に客観的な根拠と安心感を与えることができ、その商品だけでなく企業の信頼度も上がることでしょう。
2050年脱炭素目標/カーボンニュートラルにもLCAが重要!
日本政府は、2050年までにCO2の排出を減らし、またCO2の吸収を増やすことでプラスマイナスゼロにするという脱炭素目標を宣言しました。
このカーボンニュートラルを実現させるために、ライフサイクルアセスメントの考えが必要です。
自分の会社の製品の環境負荷の問題点、量、方法がわからず、やみくもに問題に取り組んでも期待している効果が出ないかもしれません。
ライフサイクルアセスメントを実施することで削減目標を設定し、正しく取り組むことができるようになるでしょう。
脱炭素目標についてはカーボンニュートラルとは?具体的な取り組みや必要性を詳しく解説を参考にしてくださいね。
ライフサイクルアセスメント(LCA)の日本での取り組み事例もご紹介
実際にライフサイクルアセスメント(LCA)の取り組みの事例をいくつかご紹介しましょう。
自動車メーカー
自動車分野では電気自動車とガソリン車の比較が代表的ですが、Hondaは製造(グリーンファクトリー)、販売会社(グリーンディーラー)、本社・地区ビル(グリーンオフィス)、購買(グリーン購買)、物流(グリーンロジスティクス)の各領域で、環境負荷の低減活動を推進しています。
アパレルメーカー
日本のアパレルメーカーで初めてライフサイクルアセスメントを実施したCFCLのペットボトル由来の再生糸で作られたPOTTERY DRESSは、石油由来の糸で生産するものと比較して約50%程度の温室効果ガスを削減できるとのこと。
1着当たり18本のリサイクルペットボトルが使われているそうです。
ほとんどの工程を日本国内で行い、輸送から出るCO2も抑制しています。
フィルム・プリントメーカー
富士フィルムでは1990年代からLCAライフサイクルアセスメントに取り組んでいて、社内講習、環境教育、環境負荷削減の全社浸透を図っています。
レンズ付きフィルム「写るんです」では完全循環再生産を実現し、その他写真処理剤補充量削減、銀使用量削減及びフィルムからの回収・リサイクルなどに取り組んできました。
ライフサイクルアセスメント(LCA)にぜひ注目を
ライフサイクルアセスメント(LCA)とは、製品・サービスの製造や加工を行う過程、処分の過程などで、どれだけ環境に影響を与えているのかを可視化すること。。
使用時のCO2排出だけを見るのではなく、作る、包装する、売る、運ぶ それぞれの場面での課題を数値化する手法です。
2050年までの脱炭素目標を実現し、環境を守るためにも、排出される環境負荷を定量的に捉えて評価するライフサイクルアセスメント実施がとても重要になっています。
ライフサイクルアセスメントはISO14040シリーズとして規格化されていて、【目的及び調査範囲の設定】【インベントリ分析】【ライフサイクル影響評価】【解釈】の手順で進められます。
エシカル消費が普及する世の中で、企業価値を高めるためにも環境問題に取り組むことはとても大事。
ライフサイクルアセスメントで自社の環境負荷の問題点や課題が可視化でき、具体的な対策を取れるでしょう。
ただ、それぞれの製品やサービスが作られる環境・条件はさまざまで、全部を正確に調査し、計算することが難しいという課題もあります。
CO2の排出を抑えて、CO2を吸収する環境を作って地球を守れるようにみんなで頭をひねりましょう!
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