こんにちは、岡畑興産靴受託事業の伊集院です。
突然ですが「超臨界発泡」という単語を聞いたことはありますか?
聞き馴染みがなく、難しそうな技術みたいだなと思う人がほとんどだと思います。
実は超臨界発泡は、靴のソールにも使われる技術なんです。
今回は技術超臨界発泡について、わかりやすく解説していきます!
超臨界発泡とは?
名前だけを聞くと超高度な手法である印象を受けますし、「靴の情報を扱うくつナビにいったいどんな関係性があるの?」と思ってしまいますよね。
超臨界発泡とは、その名の通り発泡に関する技術で、靴のミッドソールなどでも使用される技術です。
樹脂に対して高圧力と温度を掛けることで超臨界流体という状態にし、射出成型+発泡させることで通常よりも軽く、薄くて十分な強度を持った発泡体を作成することができます。
こういった技術を総じて「超臨界発泡」というのですが、ここでキーポイントになるのが「超臨界流体」という状態。
物質は温度の変化によって個体、液体、気体とに変化しますが、超臨界流体もこの形態の一種です。
もう少し具体的に説明すると、高温、高圧力を加えた環境下で、樹脂の臨界温度、臨界圧力を加えることで、超臨界流体という状態になります。
気体と液体の中間的な形態になることから、液体のような低粘性と気体のような高拡散性を持っていることが特徴です。
超臨界発泡により超臨界流体の状態になることで、超臨界発泡成形の工程の中で射出成型用の金型に射出(金型内に樹脂を流し込む工程)を行った際に、通常の液体状の樹脂よりもさらに金型内への広がりが良くなります。
超臨界流体という特殊な形態を扱うことで、超臨界発泡の技術を用いて成形したパーツ、通常の樹脂の発泡体よりも特別な特性を持つことになるのです。
この超臨界発泡の技術として、トレクセル社の「MuCell®」という方式がとても有名で、さまざまなパーツを作る上で活用されています。
超臨界発泡の技術を用いたパーツのメリットは?
わざわざ超臨界発泡の技術を用いることには、それだけのメリットがあります。
製造面でのメリットは「流動性が良い」「発泡により気泡が細かくなる」という特徴から、主に3つの点が挙げられます。
- 発泡金型に樹脂を注入した際に金型内部全体に浸透しやすく、成型後に樹脂の充填不足や、充填不足による発泡の不均等さから出る欠けが発生しにくくなる
- 発泡1回のサイクルが通常の樹脂の発泡より短縮できるため、製造サイクルの短縮となり、生産効率の向上が見込める
- 気泡が細かくなることで、より高密度な発泡パーツを作ることができる
- 高密度な発泡パーツを作れることで、同じ体積の発泡体よりもより強度が出すことができ、密度が高いことでパーツ自体の厚みを薄くすることができる
また、靴においては超臨界発泡のパーツはミッドソールの成型に使用されるケースがあるのですが、より硬く接着強度が出せるコーディングができることによって、通常の発泡ミッドソールよりアウトソールラバーやアッパーとの接着が行いやすく強度を出せるメリットがあります。
なかなか聞き馴染みのない超臨界発泡での成型ですが、皆さんの持っている日用品や靴のパーツにも、すでに使われているかもしれませんよ。
意外と身近にある超臨界発泡技術!
超臨界発泡の成型方法は通常の発泡成形とは違い、少し特殊な機材とプロセスが必要になってきます。
それゆえに、あまり身近に感じることができない超臨界発泡技術ですが、靴に限っても色々なブランドがこの技術を取り入れ、日々独自のソールの開発をしています。
こういった技術のことを少し知ってもらうだけで、皆さんが持っているシューズの見方も少し変わるかもしれません。
ぜひとも、一度皆さんが持っているシューズを見てみてください。
一般的に使われているEVAミッドソールではなく、少し触ったり押したときの弾力の感じが違えば、それはもしかしたら、超臨界発泡技術を使って成型されたソールかもしれません。
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