こんにちは、岡畑興産の染谷です。
皆様はヌメ革って知っていますか?もしくは、聞いたことがありますか?
革製品が好きな方は聞いたことがあると思いますが、ヌメ革について正確に知っている方は、意外と少ないかもしれません。
本日は、このヌメ革についてお話させていただきます。
特徴や魅力、取り扱いの注意点までを詳しくご紹介しますので、ぜひご一読ください!
ヌメ革とは?
ヌメ革のヌメの語源は「ぬめり」という形容詞からきているといわれています。
ヌメ革の滑らかでしっとりした質感がぬめりと連想された結果、ヌメ革という造語が使われるようになったそうです。
さて、そんなヌメ革は、具体的にどのような革のことなのでしょうか。
業界でヌメ革と認識されている内容は以下の通りです。
①〜③の条件を満たしているものを「本ヌメ革」といいます。
①植物タンニン鞣し(なめし)で作られた革であること
革の鞣しの種類には、一般的にクロム鞣し、タンニン鞣し、両方を合わせた混合鞣しの3つがあります。
ヌメ革は、植物タンニン剤(ミモザやケブラチョ、チェスナットなどから抽出)を使用した「タンニン鞣し」で仕上げた革です。
タンニンが皮革の繊維に入り込むと、タンニンとタンパク質がしっかり結合し、隣接するタンパク質とタンニンも結合するため、キュッと締まって密度の高い丈夫な繊維質状になります。
ちなみに、遠い昔、動物の死骸 が森の中の落ち葉に埋もれた水溜りに浸かり、肉は腐っているが皮は 腐りませんでした。
落ち葉や折れ枝などからタンニンが水に溶け、偶然の出来事ですが、一種のタンニン鞣しが起こったことが始まりとされています。
近代では19世紀にイギリスでオークからタンニンエキスを抽出して革を鞣したそうです。
その後研究が進み、色々な植物からタンニンを抽出できるようになり、現在の植物タンニン鞣しへ至りました。
②フィニッシュ加工(表面処理)をしてない
植物タンニン鞣しを行った後は、一般的にフィニッシュ加工(表面処理)を行いますが、ヌメ革はは行いません。
例えば型押し加工や、表面を擦って顔料を乗せるガラス革という加工、ウレタン塗装の加工、オイルを入れるオイルレザーの加工など、用途を想定した加工を行いますが、ヌメ革には施されていないのも特徴です。
③ヌメ革を鞣す工程はピット層で行っている
植物タンニン鞣しについては方法が2つあります。
ピット層
小分けにしたいくつものプールのようなスペースに植物タンニン液を入れて革を浸します。ピット層は濃度や成分の調整を変えた層があり、革の深皮層まで液がいきわたる様に浸すピット層を変えていき、鞣す方法です。
大変な手間と時間(約1カ月)もかかりますが、しっかりと革内部にタンニンがいきわたります。
タイコ鞣し
タンニン液を入れたタイコ(ドラム洗濯機のドラムをイメージください)に革を入れ回します。
タイコ内に突起物があり、そこに革が引っ掛かり繊維をほぐしながら浸透させる方法です。
ピット層に比べてスペース的・時間的(約2日)にも効率が良い手法となります。
紹介したピット層を使った手法を使った植物タンニン鞣しを行うことがヌメ革の条件です。
ただし、ヌメ革と広く解釈する形では③のタイコ鞣しで制作された革でもヌメ革といわれマーケットに出回っています。
また、一般的にヌメ革とは牛革を指しますが、上記条件を満たした革は総じてヌメ革です。
馬、羊、ヤギ、鹿、豚などのヌメ革もあります。
ヌメ革はタンニン鞣し後、着色や加工がされない、白に近いベージュ色の革を指しますが、染料仕上げ(アニリン仕上げ)で色のついた革も、ヌメ革と呼ぶことがあります。
※くつナビでは過去に関連するブログがございますので、ぜひあわせてご覧ください。
ヌメ革の特徴をさらに詳しく!魅力とともにご紹介
ヌメ革の大まかな特徴をご紹介しましたが、さらに深掘りしていきましょう。
ヌメ革ならではの魅力も一緒にお伝えしていきますので、ぜひ参考にしてみてくださいね!
エイジング、私色に染まって~
ヌメ革は、なんといっても「エイジング(経年変化)を楽しめる革」といえます。
ヌメ革の財布を手に入れたとしましょう。
パンツのポケットに入っていたり、バックの中に入っていたり、手で触ったり、日光を浴びたり、日々その繰り返しをすることで、繊維が揉まれて柔らかくなり、色に深みが出てきます。
いわゆる、使うことで味が出てくるということです。
ヌメ革製品は育て楽しむ革であることが大きな魅力といえるでしょう。
ちなみに、ヌメ革製品を見た目良くエイジングするという観点で、日に当てるというのがネット情報でも散見します。
それも1つの手かもしれませんが、年を重ねるごとにゆっくりと変化を楽しむことで、より愛着が湧くといえます。
じっくりと自分仕様(私色)になっていく楽しみを味わうなら、普段の生活で愛用するのがおすすめです。
サスティナビリティといえる革である
サスティナビリティは私たちの生活で、これからも大事な取り組みです。
その観点で植物タンニン鞣しのヌメ革はマッチしています。
植物のタンニンを使った環境にやさしい工程で鞣される革であり、さらに自然分解される素材であることも、今の時代にマッチしているといえるでしょう。
丈夫で長持ちする
ヌメ革は繊維密度が高いです。
その結果、他の革と比べても丈夫で長持ちします。
個性が出やすく経年劣化も楽しめる
また、ヌメ革は総じて化粧(表面処理)をしないため、生き物が生きた結果としてしわや傷、毛穴などがそのまま表面に見える状態です。
これを業界ではナチュラルスタンプと読んでいます。
それが1つ1つの製品に個性を与え、世界に1つの自分だけの革製品になります。
頬に傷のある男、この男はどんな人生を歩んできたのか!という想像を、ヌメ革でしてみるのも私は楽しいと感じます。
ヌメ革を取り扱う際の注意点やお手入れ方法もチェック!
ヌメ革は一般革と違い、表面加工をほとんどされないナチュラルな状態です。
そのため風合いは良いのですが、表面ダメージについては繊細です。
まず、水が表面につくとすぐに吸収されます。
放置するとしみになったり、その部分がふくらんだりと、変形が発生しやすいです。
また、染色しているヌメ革は水は擦れによる色落ちが発生するので、白いパンツのポケットなどに入れる際は気を付けましょう。
表面に加工がされていないことで傷がつきやすく、爪で引っかいたり、何かと擦れたりすることで傷がつきやすいのも、ヌメ革の特徴です。
浅い傷は指で表面を擦るだけで馴染みますが、強い傷は残りますので、ご注意くださいね。
そして高温下に長く置いたり、日光が当たるところに長く放置したりすることにも注意が必要です。
きれいにエイジングさせるために日光に当てる場合は、意図せずに日光に長く当てることは避け、均等に光が当たるようにホコリや汚れを取り除いておきましょう。
ヌメ革のお手入れ方法も確認
ヌメ革製品は上記の通り、取り扱いに注意が必要です。
そのため、普段のお手入れについても確認していきましょう。
新品のヌメ革製品について
使用前に軽く日光浴させるのが良いといわれています。
日光に当てるとエイジングも多少進みますが、同時に革の内部から油分が分泌され、それが表面のコーティング的な役目を果たしてくれるからです。
最初にこれを行うことで、ダメージを受けにくい状態にできます。
風通しが良い場所で、直射日光は避け、陰干しを行いましょう。
油分は乾いた布で優しく表面を拭く様にしてなじませます。
使用前にぜひ行ってみてくださいね。
日々のお手入れについて
ヌメ革製品は定期的なお手入れも大事です。
ブラシでのブラッシングもその1つです。
例えば、手で持ったりすることで、汗や手の脂がつきますし、普段の生活でホコリもつきます。
そのため、定期的にブラシでふき取る、なじませるお手入れを行いましょう。浅い傷などはブラッシングで目立たなくなリますよ。
特別なお手入れについて
革用オイルやクリームを使った、1~2カ月に1回程度の特別なお手入れもおすすめです。
革は人の肌のようなもので、乾燥すれば表面も荒れてきます。
クリームには保湿、革への栄養などの成分が入っており、塗布してなじませることで、革の質感も良くなります。
長持ちさせるための水対策について
ヌメ革は水に弱く、表面に水が付くと吸収し、放置すればしみになります。水滴が付いた際は放置せずにすぐに乾いた布などで拭き取ってください。
購入後防水剤を塗布すると、未対策にもなります。
※表面感が濃くなるなどしますので、ご注意ください
使わないときの保管について
放置している場所によっては、湿気でカビが生えたり、日光が当たるところに置きっぱなしでいることで日焼けが進んだりと、よろしくない状態になることもあります。
使用しないときは、風通しが良く直射日光が当たらない場所で保管するようにしてください。
ヌメ革の特徴やお手入れ方法を知って、長く愛用しましょう
ヌメ革製品は丈夫であるため、基本的に長く愛用できます。
経年劣化も楽しめるので、自分なりのエイジングを行ってみてくださいね。
2年後、3年後のエイジングがどうなるかは、あなた次第です。
お手入れ方法もお伝えしましたが、日々ガシガシ使っていくのも良し、大事に使い定期的な手入れをするも良しです。
答えはありませんが、ヌメ革の製品がどうなっていくか楽しみに使ってみてください!
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