こんにちは、岡畑興産のこじろうです。
近年、世の中を席巻し始めているヴィーガンレザー。
その種類の1つである「キノコレザー(マッシュルームレザー)」をご存じでしょうか。
実は、靴の世界ではアディダスのスタンスミスで使われたことで話題を呼んだ素材です。
まだまだ世の中に浸透したとは言いがたいキノコレザーですが、ものすごく魅力のある材料なので、詳しくご紹介していきたいと思います。
目次
キノコレザー(マッシュルームレザー)とは?
ヴィーガンレザーの1種であるキノコレザーをご紹介する前に、ヴィーガンレザーとは何か軽くご説明します。
ヴィーガンレザーとは、簡単にいうと動物の皮を使用せずに本革の用な見た目・質感に仕上げたレザーのこと。
「合成皮革」「人工皮革」「植物皮革」の3種類があります。
合成皮革はナイロンやポリエステル生地の上にポリウレタンなどの樹脂層をコーティングして作られたもの。
人工皮革は合成皮革に似ていますが、動物の皮膚に存在するコラーゲンをマイクロファイバーで再現してポリウレタン樹脂で結合させたものです。
キノコレザーはマッシュルームレザーとも呼ばれますが、この3種類の中の植物皮革にあたります。
文字通り、植物皮革は植物を原料に本革と似せて作られるレザーで、例を挙げるとサボテン、パイナップルの葉っぱ、りんご、ブドウ、ココナッツなどがあります。
環境に配慮して作られているレザーなので、例えばりんごなら廃棄されたも実や芯・皮・搾りカスなどから作られているなど、廃棄物が活用されるケースが多いことも特徴です。
キノコレザーはキノコ(マッシュルーム)の菌糸体を培養して作られるレザーで、短期間で成長し再生可能という特徴を活かして作成されています。
正確には、私たちがよくスーパーなどで目にするキノコの部分ではなく、その下の地中で根を張っている部分が菌糸体です。
廃棄された際にも土に還りやすいため、環境に大変優しい素材といえます。
広義的なヴィーガンレザーの材料については、くつナビの以下のコラムもチェックしてみてくださいね。
ヴィーガン材料とは?その種類や靴に使うメリットを詳しくご紹介!
キノコレザー(マッシュルームレザー)の魅力とは
キノコレザー(マッシュルームレザー)の魅力は大きく3つあります。
1つずつご紹介していきましょう。
①環境に優しく製造スピードが早い
まず1つ目は、環境負荷が低く、製造に時間がかからないうこと。
菌糸体とよばれるキノコ類の栄養体を使ってレザーを作りますが、この菌糸体は培養することで簡単に作ることができ、2週間もあれば完成してしまいます。
さらに、サッカーコートの6面分を1日で作れるとも言われていて、生育には特別なスペースや設備は必要ないそう。
仮に同じ量を天然皮革に使われる牛や豚で作ろうと思ったら、多くの時間や広大な土地も必要で、製造時のエネルギー量や環境負荷を考えると一目瞭然です。
菌糸体を収穫した後に残る培地も、次の菌糸体を作るための堆肥として使えるので無駄がありません。
特徴の説明でも触れましたが、天然素材なので生分解性が高く、廃棄しても短期間で土に分解されます。
②風合いが良い
2つ目は風合いです。
人工皮革や、そのほかのヴィーガンレザーには出せない、天然皮革に近い風合いを出せるとこともキノコレザーの魅力です。
手触りは柔らかく暖かみがあるのが特徴で、本革に近いなめらかさがあります。
キノコの細胞壁はエビ・カニなどの甲殻類にも含まれる成分と同じもので構成されており、これによって天然皮革のような弾力を生み出せます。
コラーゲンのような働きをするため、人工皮膚などにも使われているようです。
③耐久性が高く丈夫である
3つ目は、耐久性です。
風合いのみならず、品質も天然皮革に匹敵するほどの高い耐久性があります。
摩擦に強く、水に濡れたり、多少の傷がついたりしても安心して使えます。
丈夫な上に軽量なので、バッグや靴に用いると機能性が高まることも魅力です。
キノコレザー(マッシュルームレザー)はどんな商品に使われている?
キノコレザーを採用している企業は、近年増えつつあります。
例えば、有名な鞄メーカーである土屋鞄が開発した「Mylo(マイロ)」というキノコレザーは、アディダスのスタンスミス、ステラ マッカートニーのバッグなどに利用されています。
そのほか、エルメスや車のメーカーでも導入が始まっている、注目の素材なんです。
世界的ブランドのみならず、日本でも徐々に採用する企業が出てきており、キノコレザー自体の製造も長野県の企業が始めているなど、広がりを見せています。
今後さらに増えてくることでしょう。
キノコレザー(マッシュルームレザー)の特徴や魅力を知ってぜひ活用を
今回は、ヴィーガンレザーの中でもキノコレザー(マッシュルームレザー)にフォーカスし解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
メリットばかり書きましたが、まだ価格が高いこと、現時点ではオールプラスチックフリーではないものもあるので、完全に生分解する材料とはいえない場合があること、均一に成長しないため品質管理に課題があることなど、ハードル(伸びしろ)があるのも事実です。
今のうちから、キノコレザーについての知識を蓄えておけば、近い将来、一般に広く普及していったときに、模倣品や粗悪品に惑わされることなく、選択することができるのではないでしょうか?
その一端に今回のコラムが役に立てば幸いです。
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