こんにちは、岡畑香港の木下です。
近年、地球温暖化の進行と、それに伴う自然災害の増加が深刻な問題として取り上げられており、この背景には、人間の活動による温室効果ガスの排出が大きく関与していると考えられています。
そこで最近よく聞く「カーボンフットプリント」という言葉。
CO2の排出に関わることなのは理解していますが、私たちの日常生活やビジネス活動におけるCO2排出量を「見える化」することが目的なのだとか。
実際どのようなものなのか。今回はカーボンフットプリントの基本的な仕組みや歴史とその目的、課題や取り組み事例、そして認証の流れに迫っていきます。
目次
カーボンフットプリント(CFP)とは
カーボンフットプリントはCFPとも呼ばれ、商品やサービスが生産・使用され、最終的に廃棄またはリサイクルされるまでの一連の過程での「炭素の足跡」を計測することをいいます。
いくらエコな商品を作っても、その作る過程で環境に悪い物質を排出していたら、意味がないですよね?
それを起こさないために、全てのプロセスで起こる環境への影響を可視化するするのがカーボンフットプリントの目的です。
もっと具体的に言うと、商品やサービスにおける原材料の調達から生産・流通、廃棄・リサイクルに至るまで、全体で排出される二酸化炭素(CO2)やメタン、一酸化炭素、フロンガスなどの温室効果ガスの排出量を追跡し、その結果をCO2量に換算して表す仕組みです。
例として、よくスーパーで見るパック入りのオレンジジュースを挙げてみましょう。
オレンジジュースが作成され廃棄されるまでには、以下の工程が必要です。
原材料調達 :パッケージ原料調達、原材料(オレンジ)の栽培
生産 :パッケージ製造、ジュース製造、パッケージング
流通・販売 :輸配送、冷蔵輸送、販売
使用・維持管理 :冷蔵
廃棄・リサイクル:ペットボトル収集、リサイクル処理
このライフサイクルの各工程で温室効果ガスが排出されており、カーボンフットプリントの計算では、これらすべての過程における温室効果ガス排出量をCO2に換算します。
この情報をもとに、商品に「CO2:100g」というようなCFPマークが表示され、商品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガスをCO2に換算した総量を示します。
カーボンフットプリントの背景や現在までの流れ
カーボンフットプリントの考え方は、1990年代初頭に英国で提唱されました。
英国を始めとする欧州諸国やアメリカでは、2000年代に入るとCFPの計算方法や表示方法に関するガイドラインが策定され、企業や組織の間でのCFPの計算や表示が一般的となりました。
特に、欧州では環境ラベル制度としてCFPの表示が推進され、消費者の購買行動にも影響を与えるように。
日本においても、この動きに続き、経済産業省をはじめとした国の4省庁が2009年度から2011年度にかけて「カーボンフットプリント制度試行事業」を実施しています。
この試行事業で使用されたマークを継承し、新たに「CFPプログラム参加マーク」が採用されました。
マークの導入により、商品やサービスのCO2総排出量が「見える化」され、サプライチェーンに関わる事業者や消費者がCO2排出削減に向けた行動を起こしやすくなっています。
カーボンフットプリントの意義は、この「見える化」にあります。
それによって、原料生産者、卸売業者、メーカー、流通業者、小売業者など、商品やサービスのサプライチェーンに関わるすべての事業者がCO2排出削減に向けた行動を起こしやすくなるのです。
また、消費者にとっても、CFPマークやエコリーフマークの付いた商品やサービスを選ぶことで、環境負荷の低減に取り組む企業を支援し、自らの生活スタイルを変革するきっかけとすることができるでしょう。
カーボンフットプリントの取り組み事例と課題点
引用元:一般社団法人サステナブル経営推進機構 CFPプログラム
カーボンフットプリント(CFP)は、イギリスを発祥の地として、2007年にポテトチップス、スムージー、シャンプーなどの商品に世界初のCFPマークが表示されるようになりました。
その後、この考え方は欧米やアジア諸国にも広がり、各国で独自の規格が作成され今に至ります。
日本でもCFPに関する取り組みは加速しており、各企業が独自の取り組みを行っています。
アシックスの取り組み事例
アシックスでは、温室効果ガス排出量を低く抑えたスニーカー「GEL-LYTE III CM 1.95」を開発しました。
リサイクル素材を使用することはもちろん、バイオ素材の使用や、靴としてより少ない素材で作成できる構造の見直しなど、さまざまな側面からCO2の削減に取り組み、開発されたシューズです。
旭化成の取り組み事例
旭化成は、自動車や電子部品等の部品材料として使用される機能樹脂製品の温室効果ガス排出量を把握し、CFPを算出する基盤を構築しました。
シチズンの取り組み事例
時計ブランドのシチズンでは、16種類もの時計にCFPのラベルが表示されています。
時計でCFP認証を受けたのはシチズンが初めてです。
カーボンフットプリントの日本での課題点
ご紹介した取り組み事例以外にもさまざまな取り組みが行われています。
しかし、日本においては、カーボンフットプリントの認識はまだ一般的ではありません。
CFPマークがついた商品は数百点しか市場に出回っておらず、多くの消費者には知られていません。
また、別の課題として指摘されているのが、算出にかかる手間や費用に対する効果の低さです。
カーボンフットプリントは、まだ一般の消費者に浸透しておらず、企業が多大な予算と時間を割いてCO2削減努力をしても、購買につながっていない状況です。
また、消費者が商品を選ぶ基準は、環境のためだけでなく、値段や品質などさまざまな基準があるため、CFPマークを表示したところで、どこまでその購買行動に結び付くか疑問の声が挙げられています。
カーボンフットプリント(CFP)の認証を受けるには?
カーボンフットプリント(CFP)の認証を受けるためには、いくつかの手続きとステップが必要です。
まず、カーボンフットプリントの算出には「製品カテゴリールール(PCR)」という基準が使用されます。
PCRは、特定の製品カテゴリにおける温室効果ガス排出量の算出方法や、その他の関連情報を定めたものです。
各企業は、このPCRに基づいて自社の製品やサービスのカーボンフットプリントを算出します。
①PCRの選定
まず、企業は自社の製品やサービスが属する製品カテゴリに対応するPCRを選定します。
既存のPCRがない場合、新たに作成することも可能ですが、その際は専門家の意見を取り入れることが推奨されています。
②カーボンフットプリントの算出
PCRに基づき、製品やサービスのライフサイクル全体での温室効果ガス排出量を算出します。
この際、原材料の調達から製造、流通、使用、廃棄までの全工程を考慮する必要があります。
③第三者機関による検証
算出されたカーボンフットプリントは、信頼性を確保するために第三者機関による検証を受ける必要があります。検証を通過すると「CFP認証」が与えられます。
④CFPマークの表示
認証を受けた製品やサービスには、CFPマークを表示することができます。
これにより、消費者は製品選びの際に環境への影響を考慮することが容易になります。
このようなプロセスを経て、企業は自社の製品やサービスの環境への影響を「見える化」し、消費者に情報提供することができるのです。
カーボンフットプリントの認証は、企業の環境への取り組みを示す重要な手段となっており、課題点はあるものの、今後もその重要性は増していくことが予想されます。
カーボンフットプリント(CFP)で地球に優しい社会へ
カーボンフットプリント(CFP)は、私たちの日常生活やビジネス活動における環境への影響を具体的に示す指標として、近年注目を集めています。
イギリスを発祥とし、欧米やアジア諸国にも広がったこの考え方は、商品やサービスのライフサイクル全体でのCO2排出量を「見える化」することで、消費者や事業者に環境への意識を高めるきっかけを提供しています。
日本においても、多くの企業がCFPの取り組みを進めており、その認証を受けるための具体的な手順や方法が整備されてきました。
しかし、まだ認識や普及が進んでいるとは言えず、今後の普及活動や啓発が求められています。
私たち一人ひとりがカーボンフットプリントを意識し、日常の選択や行動に取り入れることで、地球環境の保護に貢献できるのです。
今後もカーボンフットプリントの普及とその意義を広める活動が、より多くの人々に伝わることを期待しています。
岡畑興産では、真面目に靴を作っている会社のブログ「くつナビ」を運営しています。
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※岡畑興産株式会社は、化学品事業と靴受託事業が連携し、機能性素材の材料開発・用途開発を進めています。