2026.04.27
ルナクリアとは?花王が開発した鉄バクテリア汚泥除去剤の特長と使い方を徹底解説

こんにちは、岡畑興産の高倉です。
地下鉄のトンネルや山岳トンネルの壁面に付着するサビ色の汚泥──その正体は「鉄バクテリア」が生み出す汚泥です。排水溝を詰まらせたり、線路の腐食を引き起こしたり、さらには足元が滑りやすくなり作業員の転倒事故につながるおそれもあるなど、インフラ維持管理の現場では大きな悩みの種となっています。
今回は、花王株式会社が開発した鉄バクテリア汚泥除去剤「ルナクリア(LUNACLEAR)TB-100」について、製品の特長から技術的なメカニズム、現場での使い方、従来対策との違いまで詳しくご紹介します。
目次
ルナクリア(LUNACLEAR)TB-100とは?
ルナクリアは、花王株式会社が開発した鉄バクテリア汚泥専用の産業用除去剤です。地下トンネルなどの漏水箇所に発生するサビ色の鉄バクテリア汚泥に対し、吹きかけるだけで汚泥を除去できる製品として、2025年6月から販売が開始されています。
花王のニュースリリースによると、すでに鉄道会社での採用が決定しており、同様の課題を抱える企業への展開が進められています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 製品名 | ルナクリア TB-100(LUNACLEAR TB-100) |
| 製品分類 | 鉄バクテリア汚泥除去剤(産業用) |
| 内容量 | 300g/本(パウチ形式) |
| 販売開始 | 2025年6月 |
| 開発元 | 花王株式会社 |
| 洗浄方式 | 分散+発泡のダブル洗浄処方 |
| 原料 | 天然由来原料を使用(環境配慮設計) |
| 主な用途 | 地下鉄トンネル、山岳トンネル、工場設備など |
鉄バクテリア汚泥とは?──ルナクリアが解決する課題
鉄バクテリアが汚泥を生み出すメカニズム
鉄バクテリアとは、水中に溶けている二価の鉄イオン(Fe2+)を酸化してエネルギーを得る微生物の総称です。土壌中に広く生息しており、自然環境中に存在する程度であれば人畜無害とされています。
しかし、地下水が豊富なトンネルの漏水箇所などでは鉄バクテリアが大量に繁殖し、酸化鉄を主成分とする茶褐色(サビ色)の汚泥を大量に生み出します。この汚泥は柔らかい粘土のような半固形状で、水をかけただけでは落とすことができないのが厄介な点です。
💡 鉄バクテリアは人畜無害
鉄バクテリア自体は自然環境中に普通に存在する微生物であり、人体に害を及ぼすものではありません。問題となるのは、鉄バクテリアが大量に繁殖した結果として蓄積する汚泥のほうです。
トンネル・地下インフラで発生する具体的な被害
鉄バクテリア汚泥がトンネル内に蓄積すると、さまざまな問題が生じます。
- 排水溝・集水口の閉塞──汚泥が排水溝に堆積して流路をふさぎ、水が溢れる原因になります
- 線路・鋼材の腐食──排水溝から溢れた水が線路やレールに達すると、サビや腐食を促進するおそれがあります
- 景観の悪化──トンネル壁面がサビ色に変色し、地下鉄駅などでは利用者の目に触れることもあります
- 滑りによる転倒リスク──鉄バクテリア汚泥は湿潤な環境でぬめりを生じ、作業員が足を滑らせて転倒する危険があります。限られたスペースのトンネル内での転倒事故は重大な労災につながりかねません
⚠️ 滑りやすい汚泥は安全上のリスク
鉄バクテリア汚泥は水分を含むとぬめり状になり、トンネル内の通路や作業足場を滑りやすくします。保線業務や点検作業は限られた時間・スペースで行われるため、足元の安全確保は極めて重要です。汚泥の定期的な除去は、設備保全だけでなく作業員の安全確保の観点からも不可欠です。

従来の除去方法とその限界
これまで鉄バクテリア汚泥の除去は、ヘラやブラシを使った手作業が主な方法でした。しかし、手作業での除去には多くの課題があります。
まず、汚泥は粘土状で付着力が強く、物理的にこすり取るには大きな労力がかかります。加えて、トンネル内での保線業務は終電後から始発前までの限られた数時間で行わなければならず、広範囲に散発的に発生する汚泥をすべて手作業で処理するのは現実的ではありません。
一方、鉄道総合技術研究所が開発した徐放性薬剤(殺菌成分を徐々に放出して鉄バクテリアの繁殖を抑制するタイプ)もありますが、これは「抑制」が目的であり、すでに発生してしまった汚泥を除去するものではありません。
こうした背景から、吹きかけるだけで簡単に汚泥を除去できるルナクリアのような製品が求められていました。
ルナクリアの技術的特長──分散+発泡のダブル洗浄処方
ルナクリアの最大の特長は、花王が独自に開発した「分散」と「発泡」のダブル洗浄処方です。この2つの作用を組み合わせることで、水だけでは落とせなかった鉄バクテリア汚泥を効果的に除去します。

「分散」──汚泥のネットワーク構造を断ち切る
花王のニュースリリースによると、鉄バクテリア汚泥は泥の粒子が集まって網目のようなネットワーク構造を形成しているとされています。ルナクリアに含まれる洗浄成分がこのネットワーク構造に作用し、構造を断ち切ることで汚泥を軟化させます。
「発泡」──軟化した汚泥を浮き上がらせて除去する
構造が壊れて軟らかくなった汚泥に対し、ルナクリアの発泡成分が泡を発生させ、汚泥を壁面から浮き上がらせます。浮き上がった汚泥は水で流すことで簡単に除去できます。
💡 なぜ水だけでは落ちないのか?
鉄バクテリア汚泥は粒子同士がネットワーク構造で結びついているため、水圧だけでは形を崩すことが困難です。ルナクリアの「分散」成分がこの構造を壊し、「発泡」で浮き上がらせる──この2段階の作用が、従来の水洗いでは不可能だった除去を実現しています。
ルナクリアの使い方──4ステップで簡単除去
ルナクリアの使用方法は非常にシンプルで、専用のハンディスプレー「ルナクリアジェット」を使って4ステップで汚泥を除去できます。
- パウチを装着 ── USB充電式のルナクリアジェットに、ルナクリア TB-100(300g入りパウチ)を取り付けます
- 汚泥に吹き付け ── 壁面や排水溝に付着した鉄バクテリア汚泥に向かってルナクリアを噴射します
- 発泡・浸透 ── 吹き付け後、洗浄成分が汚泥の内部に浸透し、発泡しながら汚泥を柔らかくほぐしていきます
- 流水で除去 ── 少し時間を置くと汚泥が流れ落ちてきます。水ですすぐとさらに効果的です
専用ハンディスプレー「ルナクリアジェット」の特長
地下トンネル内はスペースが限られており、大型の清掃機材を持ち込むのは困難です。ルナクリアジェットはUSB充電式の小型ハンディスプレーで、片手で操作できる軽量設計となっています。
花王が日用品分野で培ったフィルム容器技術(ラクラクecoパック)を産業用に応用しており、パウチを装着するだけで使用できる手軽さも特長です。トンネル内に散発的に発生する汚泥に対し、必要な箇所に持ち運んでピンポイントで対処できるため、限られた保線時間を有効に使うことが期待できます。
従来対策との比較──ルナクリアの優位性
鉄バクテリア汚泥への対策方法は大きく3つに分けられます。それぞれの特徴を比較してみましょう。
| 比較項目 | 手作業除去 | 徐放性薬剤(抑制型) | ルナクリア(除去型) |
|---|---|---|---|
| 目的 | 発生済み汚泥の物理的除去 | 鉄バクテリアの繁殖抑制 | 発生済み汚泥の化学的除去 |
| 作業負荷 | 大(ヘラ・ブラシで手作業) | 小(薬剤を設置するだけ) | 小(吹き付けて流すだけ) |
| 既存汚泥への効果 | あり | なし(予防のみ) | あり |
| 予防保全 | 不可 | 可能 | 可能(月1回程度の散布) |
| 携帯性 | 道具が必要 | 設置後は不要 | ハンディスプレーで高い携帯性 |
| 環境配慮 | ─ | 薬剤による | 天然由来原料・フィルム容器 |
「除去」と「抑制」の違い
徐放性薬剤は漏水箇所に設置して鉄バクテリアの繁殖そのものを抑える「予防型」のアプローチです。一方、ルナクリアはすでに発生してしまった汚泥を化学的に除去する「対処型」のアプローチであり、両者は目的が異なります。
ルナクリアの場合、花王ケミカルの製品紹介ページによると、月1回程度の定期散布によって汚泥の蓄積を防ぐ予防保全的な使い方も可能とされており、「除去」と「予防」の両方に対応できる点も特長といえます。
ルナクリアの環境配慮設計
天然由来原料を使用
ルナクリアは天然由来の原料を用いて設計されており、環境への負荷が少ない製品です。トンネル内で使用した薬剤が最終的に排水として流れ出ることを考慮すると、環境にやさしい原料設計は現場にとって安心材料となります。
フィルム容器でプラスチック使用量を大幅削減
花王のニュースリリースによると、ルナクリアの容器には花王の日用品でも使用されているフィルム容器(ラクラクecoパック)が採用されています。従来のボトル容器と比較して、容器に必要なプラスチック使用量を大幅に削減しています。
💡 日用品技術をインフラ分野に転用
ルナクリアには、花王が日用品分野で培ってきたフィルム容器技術や洗浄技術が活かされています。「きれいを こころに 未来に」をコーポレートメッセージとする花王ならではの、環境と使いやすさを両立した設計思想が産業用製品にも反映されています。
ルナクリアの適用範囲──トンネル以外にも広がる可能性
ルナクリアは地下鉄トンネル向けに開発された製品ですが、鉄バクテリア汚泥が発生する場所はトンネルだけに限りません。花王のニュースリリースでは、今後の用途展開について以下のように言及されています。
地下鉄トンネル
ルナクリアの主要な適用先です。すでに鉄道会社での採用が決定しており、保線業務の効率化への貢献が期待されています。
山岳トンネル
鉄バクテリア汚泥は地下鉄トンネルだけでなく、山岳トンネルでも発生することが知られています。地下水が豊富な山間部のトンネルでは、漏水箇所に鉄バクテリアが繁殖しやすい環境が整っています。
工場の配管・タンク・鋼材設備
花王のニュースリリースによると、鉄バクテリアは鉄製の配管やタンクといった鋼材設備の腐食にも関わっていると考えられており、ルナクリアの技術を応用した幅広い用途展開にも取り組んでいく予定とされています。
地下商業施設などの漏水箇所
地下構造をもつ商業施設や駐車場など、内壁のひび割れ箇所から漏水が発生する場所でも鉄バクテリア汚泥が付着・蓄積するケースがあります。こうした施設においても、ルナクリアの適用が期待できます。
📊 進むインフラの老朽化
国土交通省の資料によると、日本国内のトンネルのうち建設後50年以上が経過するものの割合は今後加速度的に増加する見通しです。老朽化が進むほど漏水箇所も増え、鉄バクテリア汚泥が発生するリスクも高まります。効率的なメンテナンス手法の確保が、インフラ維持管理の現場で求められています。
岡畑興産でのルナクリアのお取り扱いについて
花王×岡畑興産の連携実績
岡畑興産は、花王のケミカル製品の販売代理店として、これまでも水系離型剤「ルナフロー RA」などの製品をご紹介してまいりました。ルナクリア TB-100は、ルナフローに続く花王開発品シリーズとして、岡畑興産が取り扱っている製品です。
ご相談・お問い合わせ窓口
ルナクリアの導入をご検討の方、サンプルのご依頼、技術的なご質問など、お気軽に岡畑興産までお問い合わせください。鉄バクテリア汚泥でお困りの現場の状況をお聞かせいただければ、最適な活用方法をご提案いたします。
まとめ
本記事では、花王が開発した鉄バクテリア汚泥除去剤「ルナクリア(LUNACLEAR)TB-100」について、製品の概要から技術的なメカニズム、使い方、従来対策との比較、環境配慮設計、そして適用範囲まで詳しくご紹介しました。
鉄バクテリア汚泥は、トンネルや地下インフラの漏水箇所に繰り返し発生し、排水溝の閉塞や設備の腐食、さらには作業員の転倒リスクまで引き起こす厄介な存在です。従来は手作業での除去が主流でしたが、限られた保線時間の中での対応には限界がありました。
ルナクリアは、こうした現場の課題に対して花王の洗浄技術で応える新しい選択肢です。改めてポイントを整理します。
💡 ルナクリアのポイントまとめ
❶ 分散+発泡のダブル洗浄処方により、吹き付けるだけで鉄バクテリア汚泥を除去できる花王開発の産業用除去剤です
❷ USB充電式の専用ハンディスプレーで携帯性に優れ、限られた保線時間内での作業効率向上が期待できます
❸ 天然由来原料の使用とフィルム容器(ラクラクecoパック)の採用で、環境にも配慮した設計となっています
❹ 地下鉄トンネルだけでなく、山岳トンネルや工場の配管・鋼材設備など幅広い適用先が見込まれています
❺ 月1回程度の定期散布によって汚泥の蓄積を防ぐ予防保全にも活用できるとされています
鉄バクテリア汚泥による排水障害や腐食リスク、滑りによる転倒リスクにお悩みの方は、ぜひルナクリアの導入をご検討ください。岡畑興産では、現場の状況に合わせた活用方法のご提案も行っております。
ルナクリアに関するご相談・お問い合わせ
鉄バクテリア汚泥でお困りの方、ルナクリアの導入をご検討の方は、岡畑興産までお気軽にご連絡ください。
●参考
- 花王株式会社 ニュースリリース「地下トンネル内に発生する鉄バクテリア由来のサビ色汚泥を一掃 メンテナンス負荷を低減する汚泥除去剤「ルナクリア」を開発」(2025年4月16日)
- 花王ケミカル「鉄バクテリア汚泥除去剤 ルナクリア」製品紹介ページ
- 国土交通省「社会資本の老朽化の現状と将来」


