2024.06.10
すべる表面を持続させる花王の水系離型剤「ルナフロー RA」とは?
こんにちは、岡畑興産の萩田です。
3年前からコツコツ仕込んできた水系離型剤、花王さんの「ルナフロー RA」が2024年4月10日に発売されました!
この商品が弊社に持ち込まれたのが今から約3年前。
「ちょっと面白い製品ができたので味見してくれない?」と花王さんに依頼され、すぐさまスパイクソールを製造しているメーカーさんに持ち込みテストしていただきました。
当時から既存の離型剤よりも優れた性能を発揮しており、「こんなに高性能な離型剤ができるのか!」と驚愕。
早々にすごさを知ってしまった当社は、化学メーカー(ゴム製品メーカー)に持ち込み、製品化を目指すことに!
この結果、発売につながった経緯についてと、「ルナフロー RA」の製品概要を今回詳しくお伝えしていきます。
自信を持っておすすめできる製品ですので、ぜひチェックしてみてくださいね。
目次
花王の水系離型剤「ルナフロー RA」とは?
離型剤(りけいざい)※とは、物の成形の際に型から素材をスムーズに取り出せるようにする薬剤や添加物の総称のこと。
※「離型剤とは?その種類や特徴をご紹介!使用用途も確認」も参考にしてください
花王さんの「ルナフロー RA」は、水系の離型剤です。
フッ素フリー・溶剤フリーの製品設計で、フッ素を使用していないほか、VOC(揮発性有機化合物)を用いていない水性コーティング剤のため、安全かつ環境にやさしい製品になっています。
さらに、独自技術で高い油保持性を持つようにコントロールした最先端素材のCNF(セルロースナノファイバー)※を材料として活用することで、優れた離型性と持続性を実現しています。
※CNF=木材などから得られる繊維をナノレベルまで微細化した最先端のバイオマス素材
花王さんで「ルナフロー RA」が開発された背景には、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持つCNFを、使いやすくコントロールする技術を保有しており、ユーザーの目的・用途ごとにカスタマイズしたCNFを販売していたことが挙げられます。
また、2021年にはCNFと潤滑油を組み合わせることで、塗布した対象面をウツボカズラの袋内部のように“すべる表面”にする技術を確立しており、今までの知見や技術を応用したことで、「ルナフロー RA」の販売につながりました。
花王の水系離型剤「ルナフロー RA」が製品化されるまでの経緯
冒頭でも触れましたが、「ルナフロー RA」は作られた当初から既存のどの離型剤よりも優れた性能を有しており、感動した当社は早速スパイクソールを製造しているメーカーさんへ持ち込みテストをしてもらうことに!
そのときの実験結果は、くつナビのブログ「すごいかもしれない、離型剤(テスト品)」でご紹介しています。
その後、スパイクソールのインジェクションの金型でも試験をしていただきました。
通常使用しているシリコン系離型剤であれば5ショットに1回離型剤を塗布しなければなりませんが、「ルナフロー RA」はなんと30ショット打っても離型効果が持続!
当時は中身(処方)も非開示でしたので、ただただ「こんなに高性能な離型剤ができるのか!」という驚きしかありませんでした。
このお試しの段階ですぐさま持ち込める先があるのが、当社の強み。
化学品専門商社でありながらスポーツシューズの受託生産も行っているのが岡畑興産です。
靴工場は化学品工場と比べると(化学品メーカーの皆様ごめんなさい)フットワークの軽さとスピード感が桁違い!
良さそうなモノがあれば何でもいじってくれる文化があります。
そんな協力的な靴工場さんのお陰もあり、性能の良さを確信し、当社から化学メーカー(ゴム製品メーカー)に持ち込むことができました。
しかし、ゴム製品メーカーでの評価が順調であったかというとそうではありませんでした。
当初の設計は「溶剤系」でしたが、VOC(揮発性有機化合物)の排出を抑えるために水系への処方変更を行うことに。
さらにフッ素(PFAS)規制を受け、フッ素を使わない離型剤の開発を推進。
もちろん、対象となるゴム側への移行性(ゴム物性に対する影響チェック)なども確認しつつ製品化を目指しました。
このように、検討すること約2年。
溶剤フリー・フッ素フリーの離型剤を大手ゴム製品メーカーにて採用いただき、この度「ルナフロー RA」の上市につながりました!!
この頃、「ルナフロー RA」のキーマテリアルとしてCNFが使われていることを知ることとなりましたが、CNFがどのように働き、離型の持続性を発揮するのかイメージできていませんでした。
今回「ルナフロー RA」の発表と共に開示された作用機構を見て、なるほど!と思った次第です。
CNFの作用についての動画も貼っておきますので、ぜひ見てみてくださいね。
花王の水系離型剤「ルナフロー RA」のさまざまな用途
大手ゴム製品メーカーで「ルナフロー RA」を採用していただいたと同時に、花王さん独自でも用途開発を進めており、浚渫工事でも活用できることがわかりました。
浚渫(しゅんせつ)工事とは、安全な海の道をつくるために浚渫船という船を使って海底の土砂をすくい取る工事のことです。
浚渫工事には、主に“ポンプ浚渫”と“グラブ浚渫”という2種類の方法がありますが、「ルナフロー RA」はグラブ浚渫で活用することができます。
グラブ浚渫とはグラブ式浚渫船を使った工法のこと。
船体上に旋回式のクレーンを搭載し、ワイヤーロープによってグラブバケットを吊り下げた構造になっています。
このグラブバケットにより、水底の地盤を浚う(さらう)工事のことをグラブ式浚渫工事と呼んでいます。
グラブバケットは大きなスコップのようなものなのですが、水底のヘドロを浚った際にグラブバケットにヘドロがくっつくと作業効率が落ちてしまうことに。
このグラブバケットに「ルナフロー RA」を塗布することで、ヘドロがスルッと取れてしまいます!
先に解説したとおり「ルナフロー RA」は持続性に優れているため、作業効率が改善できるというわけです。
グラブ浚渫については、こちらのブログでも詳しく解説しています。
グラブ浚渫(しゅんせつ)とは?浚渫工事の目的や浚渫方法をわかりやすくご紹介!
このことから、土木工事において厄介者のヘドロ対策で「ルナフロー RA」のさらなる用途展開も可能と考えています。
花王の水系離型剤「ルナフロー RA」は驚くほど高性能!今後も期待
離型剤とは物の成形の際に型から素材をスムーズに取り出せるようにする薬剤や添加物の総称を指します。
水系離型剤である「ルナフロー RA」は持続性に優れた、フッ素フリー・溶剤フリーの環境と人にやさしい水性コーティング剤です。
当社でもこんな高性能な水系離型剤があるのか!と驚いたほど、自信を持っておすすめできる製品です。
近年では製品の小型化や複雑化によって離型剤の需要がますます増加しており、頻繁な塗り直しが不要な製品が求められていることから、「ルナフロー RA」の活躍がおおいに期待できます。
岡畑興産では花王さんの「ルナフロー RA」を世に広めるべく、これからも情報発信していきたいと思っています。
樹脂、エラストマー、ゴム、ヘドロなど、くっついて困る問題解決に、”すべる表面を持続させる水系離型剤「ルナフロー RA」”をよろしくお願いします!
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