こんにちは、岡畑興産靴受託事業の伊集院です。
突然ですが、皆さんPFCって何か知っていますか?
普通に生活する上では、あまり聞き馴染みのない言葉だと思います。
PFCという物質は、撥水加工でよく使われる物質です。
例えば、皆さんが持っているレインウェアや、アウトドアウェアなどに撥水機能を付与する加工に使われています。
今回はそんなPFCについて、どのような物質で、なぜ今PFCを使わない「PFCフリー」の取り組みが盛んに行われているかなど、詳しくご紹介しましょう。
PFCフリーとは?PFCの問題点からチェック
PFC(Perfluorocarbon)とは「フッ素化合物」と呼ばれる物質です。
生地などに対して撥水加工を付け加える上でとても効果が高く、長らく撥水効果を持たせる薬剤として利用されてきました。
特にハイキングやキャンプで着るアウトドアウェアには防水性能が強く求められることもあり、使用制限が強化されるようになるまでは、だいたいの場合PFCを使って防水加工を行っていました。
このように長らく広い範囲の製品で使用されてきたPFCですが、改めて検査してみると、PFCの中に含まれる「PFOA(パーフルオロオクタン酸)」と呼ばれる物質が、人体にも環境にも悪影響を及ぼすことがわかりました。
PFOAは自然に分解されることがなく、人間や動物の血液を汚染する高い有毒性を持ち、極端に残留性の高い化学物質であるため、人体に蓄積されやすい物質です。
PFCを使用した製品を使い続けることで、いつの間にかその成分を取り込んでしまい、知らぬ間に人体に悪影響を及ぼす危険性が非常に高く、リスクのある化学物質だと言えます。
そして近年では、様々なブランドがPFC不使用を目指して代替え物質への変更を模索するようになりました。
これが、PFCを使わない=PFCフリーの流れです。
企業のPFCフリーの現在の取り組み状況とは?
今まで広く使われてきた撥水効果を持たせるPFCの代替技術を開発するため、アパレル・スポーツブランドがPFCフリーへの取り組みを深めていますが、PFCの撥水効果はとても優れていて代替えの物質・技術をすぐに確立できるわけではありません。
最初にブランドが取り組み始めたのが、現状のウェアやシューズで使用している材料にPFCが使用されているかのチェックでした。
それぞれのブランドが独自の化学物質規制リスト(RSLリスト)を作成し、様々な材料サプライヤーに対して規制されている物質が使用されていないかのチェックを行わせ、使用されているとわかった場合には、材料の使用の取り止めか規制物質が使われていない代替材料を開発するよう要請しました。
並行して、撥水効果が期待できるシリコンやパラフィンなど、環境や人体への負荷の低い物質を使ったPFCフリーの技術の開発を続けています。
ただし、PFCほどの撥水効果が発揮できていなかったり、油分への耐性が低く汗などで撥水加工の効果が失われてしまうなど、まだまだ課題が多いのが現状です。
人工皮革メーカーである帝人コードレ社でもPFCフリーの取り組みを行っており、PFC
フリーでありながら動物性由来の物質を一切使っていないサステナブルな人工皮革「Q1000PW」なども開発されています。
興味がある方は、ぜひご参考ください。
有名なアウトドアブランドでは、実際にどのような取り組みがされているかも見てみましょう。
アウトドアブランドのPFCフリーへの取り組み例
取り組み例として「Patagonia」「The North Face」「GORETEX」の3メーカーをご紹介します。
Patagonia
環境保護で名高い、サステナビリティ先進企業であるPatagonia。
2022年秋までに中間着や撥水機能の重要度が低いアウターへのPFC不使用を実行し、残り10%の重要度の高いものには使用を継続して、化学者と連携しながら代替え策の開発を急いでいます。
The North Face
環境配慮型の素材を使用するなど、環境保護活動に積極的なThe North Face。
各国アスリートによるPFCフリー技術使用製品のウエアテストを実施しています。
濡れた環境・乾いた環境を想定し、環境負荷と人体へのリスクバランスを課題として、製品開発を進めています。
GORETEX
環境に影響のある有害化学物質廃止を宣言した、防水透湿素材メーカーのGORETEX。
現在はPFC使用の【Gore DWR】とPFCフリーの【Gore PFCEC FREE DWR】の使い分けをしながら、より機能性の高いPFCフリー素材の開発を進めています。
2023年までに、環境への影響に懸念のあるPFCを消費者製品から完全に除去することを宣言しています。
PFCフリーとは環境保全への第一歩!今後の進展にも期待
「フッ素化合物」であるPFCは、長らく撥水効果を持たせる薬剤としてアウトドアウェアなどに多く利用されていましたが、人体や環境に高い有毒性があることが判明してから使用制限が強化されています。
そのため、近年ではPFC不使用=PFCフリーの流れが主流となり、代替え素材への変更を模索するブランドが増えています。
ただし、PFCの持つ撥水・撥油性は雪山登山などの厳しい環境下では命を守るのに必要な機能でもあるのが事実です。
環境配慮と人命リスクのバランスで使い分けをせざるを得ないのが、どのブランドの取り組みにも共通しています。
機能が劣る素材でもレイヤーを増やしてカバーするなど、構造を工夫することも代替えになるように、環境負荷の軽減と機能性が両立できる技術の開発を諦めず継続することが重要です。
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