岡畑興産靴受託事業の伊集院です。
靴底は「アウトソール」「ミッドソール」2つの構造になっていることをご存知でしょうか?
実は地面と接地するアウトソールと、アウトソールとアッパーの間にあるミッドソールに分かれており、それぞれに役割があります。
アウトソールは地面に接着するので機能性や使われる素材というのはとてもイメージしやすいですが、ミッドソールはどんな役割があってどんな材料が使われるかというイメージしにくいのではないかと思います。
そこで、今回はミッドソールに注目!
どんな機能や役割があって、どんな素材を使っているのか、詳しく解説していきます。
ミッドソールってどんな特徴や役割があるの?
まずはミッドソールとは何かについて、ご紹介しましょう。
「スニーカーの構造をチェック!各部の名称や役割を詳しくご紹介」でも簡単にお伝えしていますが、ミッドソールはソールと言われる靴底の中の一部分で、アウトソールと呼ばれる大底(地面に接地しているところ)とアッパーの間にあるパーツのことを指します。
主に、足が地面に接地した際の衝撃を緩和するクッションとしての役割と、歩く際の足首のブレを防ぐという機能的な役割を持っています。
色々なブランドの靴を履き比べた際に、かなりクッション性を感じるものや、まるで素足で地面に接地しているような硬い感覚があるもの、前かがみになるような感覚になるものなど、それぞれ異なる感想を抱いたことはないでしょうか。
これは、それぞれのブランドがその靴に沿ったコンセプトでミッドソールを設計し、理想の足入れ感を実現させた結果と言えます。
ミッドソールは形状・厚み、硬度についてかなり自由度が高いため、さまざまな靴・スポーツブランドで、その機能や形状について独自性を持たせている部分でもあるのです。
ミッドソールで使われる素材ってどんなもの?
ミッドソールで使用される素材は、アウトソールやアッパーのような多種多様なものがあるというわけではなく、かなり限定されます。
これは、ミッドソールの形状設計のために自由度の高さが重要となり、さらに常に踏まれて力が加わるパーツという特性ゆえに、「幅広いバリエーションで設計が可能で耐久性が高く実績ある素材」が使われやすいということが理由と言えます。
もちろん、スポーツブランドの努力により新しい素材も出てきていますので、今後は使用される素材のバリエーションも増えていくことも予想されます。
今回は、現在一般的に使用されている材料についてご紹介します。
EVA(エチレン酢酸ビニル)
EVAはエチレン酢酸ビニルと呼ばれる材料で、ミッドソールに一番よく使用される材料ではないでしょうか。
特徴としては非常に軽く、クッション性もあるため、多くのブランドのスニーカーで採用されています。
また、材料自体の硬度のバリエーションや形状の作りやすさもあり、同じEVAを使用していてもスポーツブランドごとで全然違う履き心地を作り出せます。
デメリットとしては、耐摩耗性が低く、摩擦などで簡単に傷ついてしまうこと。
そのため、アウトソールにラバーを貼り合わせるなど、地面の接面にEVAが露出しないよう工夫しなければなりません。
そしてデザイン的に注意が必要となる材料でもあります。
PU(ポリウレタン)
アッパーの材料として使用される人工皮革の原材料としても有名なポリウレタンですが、ミッドソールで使用される材料としても有名です。
ポリウレタンの特徴である軽量性と、弾性の強さを活かし、競技向けの靴に使われる傾向があります。
また、摩耗性などの耐久性に優れるという特性もあり、ミッドソールに使用した場合、より自由度の高い設計が行えます。
デメリットとしては、ポリウレタンの宿命と言える加水分解性が挙げられます。
空気中の水分により加水分解が発生し、長い時間をかけて少しずつ劣化していく特性があるため、劣化が進むと履き心地が変わったり、ミッドソール自体が裂けてしまうなど靴として使用できなくなってしまいます。
発泡ラバー
ラバーフォームと呼ばれるラバーを発泡させることで作られる発泡ラバーは、ミッドソールというパーツが誕生してから使われ始めた材料です。
その歴史は古く、EVAよりもずっと昔から使われていますが、より軽いEVAという材料が誕生してからは主役の座を奪われてしまった印象があります。
ただ、発泡ラバー自体も日々進化しており、現在では軽量発泡ラバーなども開発され、ラバーアウトソールとの接着の相性も良いことから、レザースニーカーなどで使用されることがあります。
また、スポーツサンダルなど、EVA以上の耐久性などが必要となる靴でも発泡ラバーが使用されることがあります。
ミッドソールの素材は今後もバリエーションに期待大!
ミッドソールとはソールと言われる靴底の中の一部分で、地面に設置するアウトソールと、アッパーの間にあるパーツのこと。
足が地面に接地した際の衝撃を緩和するクッションとしての役割と、歩く際の足首のブレを防ぐという役割があり、まさに靴の中の縁の下の力持ちとも言えます。
使われる素材としては、主にEVA(エチレン酢酸ビニル)、PU(ポリウレタン)、発泡ラバーが挙げられます。
現在は新しい素材も出てきていますので、今後は使用される素材のバリエーションも増えていくことでしょう。
靴の中の縁の下の力持ちとも言えるミッドソール。
少しでもこのパーツの重要性を感じてもらえたら嬉しいです。
「くつナビ」には、この他にもアウトソールやソールに使用する樹脂や材料について、より細かく紹介しているコラムがあります。
そちらもあわせて、より靴に関する知識を深めてもらえればと思います。
かの有名なVIBRAMもアウトソールだけではなくミッドソールの設計やEVAにこだわった多種多様なソールを取り扱っています。
くつナビでは今後、VIBRAMさんへのインタビューも企画していますので、お楽しみに!