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2022.09.08

生分解性プラスチックとは?種類や用途、活用のメリットを解説

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こんにちは、岡畑興産のかげやまです。

 

通常のプラスチックは基本的に微生物による分解が不可能で、たとえ土に埋めたとしても、分解されることはありません。

一方、生分解性プラスチックとは、時間経過によって微生物による分解が可能なプラスチックのことを言います。

 

今回は、この生分解性プラスチックについて、種類や用途、活用のメリットなどを紹介します。

 

生分解性プラスチックの説明に入る前に、現在問題になっている、プラスチック廃棄問題についてもお話ししますね!

廃棄プラスチック問題から解説!生分解性プラスチックとは?

プラスチックは短期間のうちに経済や社会に浸透し、私たちの生活に便利さと恩恵をもたらしてくれています。

 

その一方で、不適切な処理により年間数百万トンものプラスチックが陸から海に流出し、海洋プラスチックごみによる汚染が世界的な問題となっています。

 

プラスチックは原則自然に分解されることがないので、一度自然界に流出してしまった場合、分解されることなくほぼ永久的に残り続けてしまうのです。

 

現在のペースでいくと、2050年には魚の重さ以上のプラスチックが海洋環境に排出されると予測されています。

 

そのような分解できないプラスチックの代替素材として、生分解性プラスチックが登場しました

 

 

 

生分解性プラスチックとは?定義やメリット

生分解とは、バクテリアや菌類などの微生物によって、有機化合物が分子レベルまで分解されることです。

 

「生分解性プラスチック」は、プラスチックと同じ性状や機能を持ちながらも、使用後は微生物などの働きによって生分解され、二酸化炭素や水として自然に還る素材を指します。

 

「生分解性プラスチック」の生分解度は、定められた基準と、国際的に規定された試験方法をクリアした上で判断されます。

 

さらに分解過程(分解中間物)・重金属等の含有物の安全性の基準をクリアすると、生分解性プラマークをつけることが認められます。

 

短い期間で自然に還るためごみとして蓄積されず、海で分解される生分解性プラスチックであれば、海洋プラスチックごみ問題の対策につながる画期的な素材です。

 

 

 

生分解性プラスチックとバイオマスプラスチックの違いは?

生分解性プラスチックの他にも、似ているもので「バイオマスプラスチックと呼ばれるプラスチック代替素材もあります。

 

バイオマスプラスチックは原料にバイオマスを利用することが特徴です。

原料の種類等は多岐にわたりますが、分類としてはバイオマスを全面的に使うか、部分的に使うかによって分けられます。

 

バイオマスとは、動植物から生まれた有機性の資源(石油や石炭などの化石資源以外)で、農林水産物、稲わら、もみがら、食品廃棄物、家畜排せつ物、木くずなどを指します。

 

つまり枯渇資源ではなく、非枯渇資源を全体的・部分的に使用することで、プラスチック燃焼時に生じるCO2の削減が期待できます。

 

 

 

 

生分解性プラスチックの種類や用途は?

生分解性プラスチックには、実はいくつかの種類があります。

用途とともに、ご紹介していきましょう。

 

 

生分解性プラスチックの種類

生分解性プラスチックは微生物によって分解されますが、中には光や熱によって分解される「酸化型生分解性プラスチック」というものもあります。

 光や熱を受けて、あらかじめ添付された添加剤の作用で、構造が崩壊するように設計されています。

 

このほか、生分解性プラスチックは近年さまざまな種類が開発されており、微生物産生系・天然物系・化学合成系の3種類が代表的です。 

 

 

※出展元:日本バイオプラスチック協会


化学合成系

ポリ乳酸(PLA)

ポリ乳酸は現在最も研究・実用化されているトウモロコシやサトウキビが主原料の生分解性プラスチックです。

 

ポリ乳酸は通常の使用条件では分解せず、コンポスト(堆肥施設)中で微生物によって分解されるという特徴を持っており、製品の使用中に分解が始まり劣化することを防ぐことができます。

 

バイオプラスチック、生分解性プラスチックの中では比較的低価格の上、熱可塑性樹脂で成型加工が可能なため、多くの製品に使われています。

 

日本国内では、ハイケム株式会社がポリ乳酸を樹脂ペレット、ワタ、繊維、不織布として素材化しています。

 

ただ植物由来のポリ乳酸は、乳酸菌の発酵活動の副産物として乳酸を得る工程が必要なため生産効率に限界があり、高まる需要に供給が追いついていない状況です。

 

 

ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT) 

テレフタル酸、ブタンジオール、アジピン酸を縮合重合によって形成された、石油由来の生分解性プラスチックです。 

ポリ乳酸と同じく、コンポスト中でよく分解される性質を持っています。

 

柔らかく、伸びる(強靭である)、コンポスト化での生分解性が高い点が特徴です。

フィルム状に加工されることが多く、レジ袋や農業用のマルチシートなどに使われています。

 

また、合成ポリマーであるため、大量生産に向いていることもメリットの1つです。

 

 

微生物産生系

ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)

広範な微生物によって産生される天然ポリエステルです。

でんぷんやグリコーゲン、油脂などと同様にエネルギー及び炭素貯蔵物質として微生物の細胞内に蓄積されます。

 

工業的に生産するためには、主にCupriavidus necator(カプリアビダス・ネカトール)と呼ばれる微生物に糖類や食物油を与え、体内にポリヒドロキシアルカノエートを蓄積させる方法をとります。

 

ポリヒドロキシアルカノエートは、海水中であっても生分解が生じる特徴があり、海洋プラスチック問題の解決に直接的に寄与することができます。

 

釣り糸や漁業で使用される網への使用が期待されています。 

 

 

天然物系

酢酸セルロース

セルロースとは地球上に最も豊富に存在する天然高分子で、 耐水性、耐熱水性が良く、耐溶剤性があります。

 

しかし耐溶剤性があることで水にも汎用溶剤にも溶けないため、高分子材料としての取り扱いが難しいことが課題としてありました。 

 

そこで、溶剤に溶けるような性質(溶解性)や加工のしやすさ(加工性)を付与するために、誘導体化を行ったものをセルロース誘導体と呼びます。

このセルロース誘導体として開発されたのが、酢酸セルロースです。

 

セルロースの酵素は海水中にも存在することから、海水中での生分解性も有していて、PHAと同様に海洋プラスチック問題の解決の担い手となるでしょう。

 

 

生分解性プラスチックの用途

現在、生分解性プラスチックの使用方法としては、ごみ袋やペットボトルなどがあります。

 

その他に、PLA繊維を用いたセーターやポロシャツ、PLA不織布を用いたマスク、PLAの硬質性を活かして水筒や食器、食品トレイなどが実用化されています。

 

サバゲー(サバイバルゲーム)で使用されるエアーガンの弾(BB弾)にPLAを使用している実例もあります。

サバゲーの1試合では何千発というBB弾が発射され、試合後のBB弾の回収や処理についての課題がありますが、生分解性プラスチックを使用することでクリアすることが可能です。

 

PBATは前述の通り、レジ袋やゴミ袋、農業用のマルチシートなどに使われています。

農業用マルチシートの回収は農家の大きな負担になっているため、畑にすき込むだけで分解されるPBATは回収に掛かる労力や人件費を抑えることができ、農家の力強い味方になるでしょう。

 

 

また、海洋プラスチック問題の直接的な原因である釣り糸や漁業用の網は、意図せずに海へ流出することがあります。

PHAや酢酸セルロースで作ったものは海洋で分解されるため、環境問題へ貢献できる素材として期待されています。

 

 

 生分解性プラスチックは、微生物の力によって分解することが可能で、使い終われば何もしなくても土や海に還ることができる優れた素材なのです。

 

 

 

生分解性プラスチックの今後の課題点は?

 

環境問題に貢献する生分解性プラスチックですが、課題点もあります。

 

 

課題点①:コストが高い

包装材によく使われるポリエチレンやポリプロピレンは、大量生産が可能なため、非常に安価です。 一方、 生分解性プラスチックは、現在の科学技術では安価に大量に生産することができません。 

 

そのため、非常にコストが高いです。

私たちの認識では「少なくとも数倍は高い」と思っています。

 

 

課題②:品質が保証できない

日本では生分解性プラスチックの基準を、日本バイオプラスチック協会が認証基準を定めていますが、その中で「3ヶ月で60%以上劣化すること」という項目があります。

 

これは、3ヶ月後の品質が保証されないことを意味し、3ヶ月後に包装材としての機能を失う可能性があるということです。

 包装が同じ状態でどれだけの期間保管できるのか、包装された製品の品質を保証することができるのかについて、微生物の活性状況にかなり左右されます。

 つまり、在庫として保管している生分解性プラスチックも3カ月間保管するだけで、劣化が始まります。

 

この「品質が保証できない」という特性は、「パッケージング」において大きな課題です。

同じ理由で、リユースやリサイクルには向かず、基本的に使い捨てになります。

これもコスト高を招く要因の一つです。

 

 

 このように、まだまだプラスチックをすべて生分解性プラスチックに全て置き換えることは難しいのが現状です。

しかし今後ますます改良されることが予測されるため、生分解性プラスチックを利用した製品を目にすることは増えてくるでしょう。

 

 

 

生分解性プラスチックとは環境に優しい素材!今後の改良に期待

 

生分解性プラスチックはとても環境に優しい素材です。

 

90年代頃から活発に開発され始め、その後、愛・地球博にて大きく取り上げられ、そして現在三度目の盛り上がりを見せています。

 

生分解性プラスチックはその分解性の高さ故に製品化した際の品質の問題や、実際の処理手続きに課題を抱えています。

ですが今後の改良次第では、海洋プラスチック問題の改善や、持続可能な社会を実現するだけのポテンシャルを秘めています。

 

今後ますます目を離せない素材になること間違いなしでしょう。

 

 

 

岡畑興産では、真面目に靴を作っている会社のブログ「くつナビ」を運営しています。

靴や靴の素材、豆知識などさまざまな知識を発信していますので、こちらもご参考ください!

 

岡畑興産株式会社は、化学品事業靴受託事業が連携し、SDGsに貢献できる材料開発・用途開発を進めています。

 

 

 

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