2024.04.08
酢酸メチルと酢酸エチルの違いは?取り扱いの注意点や安全性も確認
こんにちは、岡畑興産の萩田です。
みなさんは、「酢酸メチル」や「酢酸エチル」という化学物質を知っていますか?
この2つには「共に有機化学品で液体」という共通点がありますが、毒性や危険性、用途などで異なる点がさまざまあります。
今回はそれぞれの特徴・性質・用途などについて、その違いを詳しく解説していきたいと思います。
ぜひ最後までご覧くださいね!
目次
酢酸メチル・酢酸エチルとは?共通点や違いを解説!
酢酸メチル・酢酸エチルは、冒頭でお伝えしたように、共に有機化学品で液体です。
そして2つ共通点として、プラスチックをよく溶かす・脱脂力が弱いという特徴があります。
プラスチックなどの他の物質を溶かす性質をもつ有機化合物(液体)を有機溶剤と呼びます。
有機溶剤にはさまざまな種類がありますが、酢酸メチルと酢酸エチルは「エステル系溶剤」に分類されます。
エステルとは、酸とアルコールを脱水縮合※したもの。
※脱水縮合=縮合する2個の分子が、それぞれ水素原子と水酸基水分子を失い、新たな化合物をつくる反応のこと
酢酸メチルは酢酸とメタノールから形成されるエステル、酢酸エチルは酢酸とエタノールから形成されるエステルです。
さらに違いを知るために、それぞれの特徴をご説明しましょう。
酢酸メチルの特徴
接着剤や除光液に近いエステル臭がする無色透明の液体です。
一般的な有機溶媒とは混和する一方で、水とはほとんど混和しない特徴も持ちます。
ただし、 温度を上昇させた場合は水に溶けやすくなります。
酢酸メチルは、速乾性が高いこと・水より密度が高いこと・可燃性が高いことも特徴。
引火点の-10度以上では蒸気/空気の爆発性混合気体を生じることがあり、非常に燃えやすい化学物質です。
また、蒸気が空気より重く、地面に沿って移動する性質があるため、遠距離発火のおそれもあります。
酢酸メチルは名前の通り酢酸CH3COOHにメチル基「CH3」がくっついた構造となっており、「CH3COOCH3」と示されます。
酢酸エチルの特徴
無色透明の液体であることは酢酸メチルと共通ですが、果実のような甘い香りがします。
引火点は-4度と酢酸メチルより高く、取り扱いに関しては少し容易になります。
また、ほとんどの有機溶媒に溶けますが、酢酸メチルと同じく水には溶けにくいです。
蒸気が空気より重いこと・水より密度が低いこと、そして速乾性が高いことも酢酸メチルとの共通点ですが、酢酸メチルの方が分子量が小さいため早く乾きます。
酢酸エチルも同様に、酢酸CH3COOHにエチル基「CH3CH2」がくっついた構造で、「CH3COOC2H5」と示されます。
酢酸メチルと酢酸エチルの情報・危険性の違いも比較!
では、酢酸メチルと酢酸エチルの識別情報から見てみましょう。
上記の番号は化学品に付けられた背番号のようなものです。
国内流通のみならず、貿易を行う際にはこの背番号が役に立ちます。
続いて物性情報の違いについてです。
酢酸メチルより酢酸エチルの方が分子量が大きくなる分、融点や沸点が上がります。
つまり、酢酸エチルの方が水への溶解度が低くなっているということです。
毒性・危険性について
両物質とも高濃度の蒸気は、目やのどの粘膜を刺激し、麻酔作用があります。
上記のデータからも、若干酢酸メチルの毒性が強い傾向が見られます。
また、体内に吸収されると体内のエステラーゼによって加水分解を受け、酢酸とアルコールに分解されます。
酢酸メチルは分解された後のアルコールがメタノールですので、メタノール同等の中毒作用が現れます。
酢酸メチルも酢酸エチルも、お伝えしたように引火性液体ですので、火の元での取り扱いには注意が必要です。
消防法では、第4類引火性液体・第一石油類非水溶性液体に分類されています。
酢酸メチル・酢酸エチルの用途の違いもチェック!
主に化学物質としての酢酸メチルと酢酸エチルの違いを見てきましたが、ここからは用途に関して、その違いを見ていこうと思います。
酢酸メチルと酢酸エチルの用途は?
専門書を紐とくと、酢酸メチルの用途は「溶剤・香料・抽出溶媒」とあります。
一方、酢酸エチルの用途は「塗料・インキ・接着剤・除光液・香料・レザー・真珠」などです。
特に印刷インキや接着剤、除光液に使われていますが、短時間で加工ができること・速乾性が高いことから、酢酸エチルが多用されています。
速乾性だけに着目すると、酢酸メチルのほうが使いやすいのでは? と思われるかもしれません。
しかし、後述しますが酢酸メチルのほうが毒性が高いこと・コストがかかることから、酢酸エチルが多用されていると想定されます。
また、酢酸エチルは果実の香りがするため食品添加物としても指定されており、お菓子や清涼飲料水などの香料としても使用されています。
酢酸メチルは酢酸エチルの代替え品になる?
冒頭で、エステル系の溶剤はプラスチックをよく溶かしますが、脱脂力は弱いという特徴を説明させていただきましたが、酢酸エチルの用途はまさにその特徴を反映した内容になっています。
また、酢酸メチルと酢酸エチルの基本物性についても比較しましたが、結果としてはよく似た物性ということが分かりました。
このことから、「酢酸メチルは酢酸エチルの用途の代替が可能」という情報が出ています。
しかし、市場としてはそうなっていない現実があります。
エステル系の溶剤では、酢酸エチルが圧倒的に汎用溶剤として流通しており、国内の需要も約20万t前後(2022年)で安定。
一方酢酸メチルについての市場規模は、酢酸エチルと比較すると随分小さいことが予想されます(正確なデータは持っていません)。
市場価格についても酢酸エチルで一般的な価格が¥200/kgとするならば、酢酸メチルは¥700~800/kgの水準と予想しています。
原料背景的(製造原価)に大きな差は無いと思いますので、この価格差は需要に比例したモノだと思われます。
そしてこれだけの需要の差を生み出しているのは、わずかな毒性の差ということなのでしょうか?
まだクエスチョンなところですので、今後もう少し深堀りしてみたいと思っています!
酢酸メチル・酢酸エチルの違いを知って正しく活用を!
今回は酢酸メチルと酢酸エチルについて違いを検証してみました。
まず分かったことは両物質ともエステル系の溶剤で、物性的には大きな差がないこと。
分子量の小さい酢酸メチルが、より融点や沸点の温度が低い傾向が見られました。
塗料や接着剤においては、速乾性が高くコストが低い酢酸エチルが商品設計に使えそうです。
毒性においては、酢酸エチルより酢酸メチルが若干強いということが分かりました。
また、同時に分かったことが市場規模の違いです。
恐らく(推測)、わずかな毒性の差で市場規模が大きく違っているのではないかという仮説を立てていますが、こちらについては興味を持ちましたので、もう少し調べてみたいと思います。
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