2023.08.10
レンズ用樹脂とは?用途や市場規模についてもご紹介
こんにちは。「岡畑興産」の川野です。
今や生活になくてはならないスマホ。車体の側部についているカメラ。眼鏡。
意識して見れば、色々なところに「レンズ」が使用されています。
最近では、眼鏡などにガラスレンズではなく、樹脂レンズがよく使われています。
今回は、レンズ用の樹脂とは? そもそも樹脂とは? というところから解説していきます。
目次
樹脂とは?樹脂の種類も確認!
樹脂は、脂(ヤニ)と呼ばれる、樹木から取れる植物由来の天然物のことです。
樹脂の種類には、天然樹脂と合成樹脂があります。
植物からとれる樹脂が「天然樹脂」、石油などを原料として樹脂に似た物質を人工的に作ったものが「合成樹脂」です。
日本では、「天然樹脂」は樹液を材料とするものという認識が一般的ですが、海外では、動物や鉱物に由来するものも「天然樹脂」に分類されます。
樹液が空気に触れて固まったものを天然樹脂といい、松脂(まつやに)や漆(うるし)が代表的です。
私たちの生活に一番身近な合成樹脂は、「プラスチック」です。
樹脂や合成樹脂よりもプラスチックという名称の方が、よく聞くのではないでしょうか。
ちなみにプラスチックは「熱可塑性樹脂」に分類されます。
レンズ用樹脂とは?その使われ方もチェック
近年、私たちの周りには、従来のガラスよりも製品を魅力的にし、携帯にも便利な透明なプラスチック素材があります。
そのうちの一つが、本題の「レンズ用樹脂」です。
レンズ用樹脂にもいくつかの種類があり、そのうち3つを解説していきます。
①アクリル樹脂(PMMA)
ガラスの代替として、広く使用されている硬質で透明な熱可塑性材料。
他の透明なポリカーボネートやポリスレン樹脂に対して、複数の技術的な利点を有します。
例えば以下のような用途で使われています。
- 水族館の巨大水槽に用いられるPMMAシート
- 最大92%の光透過率&光学特性を生かした光学レンズ
大きなメリットとしては、「製造コストが安い」点が挙げられます。
②環状オレフィンポリマー(COC・COP)
環状モノマーとエチレンの共重合によって、製造される非結晶性で透明な熱可塑性材料。
ポリプロピレンやポリエチレンなどの汎用品に比べて、新しい種類のポリマーで、優れた光学的透明性が特徴です。
良好な機械特性、水分バリア性が知られています。
そのため、医療・薬品分野、放送分野からエレクトロニクス分野まで幅広く活躍しています。
なかでも、スマホカメラの超小型レンズ用樹脂「アペル®」は有名です。
③ポリエステル
身の回りではペットボトルに代表されるポリマーで、強度や成形性、柔軟性に優れた熱可塑材料。
骨格にいろいろなモノマーを導入することで様々な光学特性や機械物性を付与することができます。
また、設計によっては、高い屈折率を有しながら歪み(複屈折)をゼロにすることもできますが、価格は高いです。
ガラスレンズ代替の高屈折プラスチックレンズとしては歴史が長く、スマートフォンをはじめ、パソコン、タブレット、ゲーム機、掃除機、自動車など、多くのカメラレンズに使用されています。
レンズ樹脂向けのポリエステルとして、大阪ガスケミカル社製「OKP®」が有名です。
④ポリカーボネート(PC)
高い衝撃強度、寸法安定性、良好な機械特性がある熱可塑材料。
PCの特性は上記のPMMAに似ていますが、ポリカーボネートの方が強度があります。
また、広い温度範囲で使用できるメリットもありますが、価格は高いです。
PMMAとの混合物として広く使用されており、一般用途としては、自動車のヘッドランプレンズやスマートフォンのレンズなどがあります。
スマートフォンのレンズの一例として、三菱ガス化学社製「ユピゼータ®EP」があります。
レンズ用樹脂の種類とは?光学レンズ用樹脂が大注目!
レンズ用樹脂の種類は、2つあります。
まずは種類ごとに説明していきましょう。
①プラスチックレンズ
ガラスレンズに比べて、軽量で、割れにくいといった安全性や、価格が安いという魅力があります。
用途:車のヘッドライト、プリンター、光電センサー、VRの接眼レンズ、ドローン等
②ガラスレンズ
傷や熱に強く、最も薄くレンズを仕上げる加工が可能です。耐熱性や耐環境性がプラスチックレンズよりも優れているという魅力があります。
衝撃には弱いため、眼鏡等ではプラスチックレンズを選ぶ方も増えています。
用途:デジタルカメラ、車載カメラ、光通信用レンズ、プロジェクター、センシング機器等
また、使われ方では、レンズ用樹脂の用途としてスマートフォンのレンズをご紹介しましたが、レンズとして、特に光学レンズ用樹脂が今注目されています。
光学レンズとは光を集束または散乱させたり、形を整えたりする装置のこと。
カメラ、望遠鏡、顕微鏡、医療機器など、光学機器に幅広く採用されています。
レンズ用樹脂の市場規模は年々拡大!
今や私たちの生活になくてはならないスマートフォンに使用されている「レンズ用樹脂」。
きれいな写真を撮りたい、顔認証でロックを開けたいなど人々の要望に合わせて様々なレンズ用樹脂が改良・開発されてきました。
富士キメラ総研の「2022年透明・特殊ポリマーの現状と将来展望」によると、2025年は、2020年比123.1%の559億円の市場規模になると期待されています。
スマートフォンの背面カメラの多眼化、顔認証システムやセンサーの搭載など、高解像度かつニーズの高まりで、より市場が拡大しています。
市場のニーズの高まりにより、スマートフォン1台当たりのレンズ搭載枚数も急増し、レンズ用樹脂の市場規模は年々拡大しています。
レンズ用樹脂の概要や用途、市場規模について知ろう
プラスチックをはじめ、スマホや車、眼鏡など私たちの生活必須のモノには「樹脂」が使用されており、レンズ用樹脂もその1つです。
樹脂には、植物からとれる「天然樹脂」、石油などを原料として樹脂に似た物質を人工的に作った「合成樹脂」の大きく分けて2種類があります。
スマートフォンの背面カメラの多眼化、顔認証システムやセンサーの搭載など、高解像度かつニーズの高まりで、より市場が拡大しています。
市場のニーズの高まりにより、スマートフォン1台当たりのレンズ搭載枚数も急増し、レンズ用樹脂の市場規模は年々拡大しているため、今後も需要は高まるでしょう。
岡畑興産のブログでは、他にもフッ素樹脂の「PTFE」や「エンプラ」「PEKKやPEEK」も紹介しています、ぜひご覧ください。