2025.07.09
チオグリコール酸アンモニウムとは?匂いの特徴や消臭技術の進化に注目
こんにちは、岡畑興産の萩田です。
みなさんは「チオグリコール酸アンモニウム」という成分を耳にしたことはあるでしょうか?
どんな物質でどんなにおいがするのか、気になったことはありませんか?
今回は、チオグリコール酸アンモニウムの基本情報から用途、また特有のにおいや安全性について解説します!
さらに、弊社のお取引先である花王さんによる先進的な消臭技術にも注目し、においの課題をどう克服していくかをわかりやすくご紹介。
化学や香料技術に興味のある方、製品開発に携わる方は必見です!
目次
チオグリコール酸アンモニウムとは?基本情報から確認!
チオグリコール酸アンモニウム(Ammonium Thioglycolate)はチオグリコール酸とアンモニアから生成される有機化合物で、化審法番号は(2)-1355と(1)-391, CAS NO.5421-46-5。
水溶性の無色~淡黄色の液体です。
強い還元力を持ち、ケラチンタンパク質中のジスルフィド結合をメルカプト基に還元することで切断する性質があります。
この性質を利用し髪の構造を一時的に変化させるのがパーマの原理であり、チオグリコール酸アンモニウムはヘアパーマ液の主要成分として広く利用されています。
また、金属表面の酸化被膜除去や自動車のホイールなどの鉄粉除去剤としても用いられます。
鉄粉の付着原因となっている錆を還元することで溶かし、鉄粉を分離させます。
この際、ブレーキダストは紫色に変色するため、洗浄の目安となります。
このようにチオグリコール酸アンモニウムは産業用途と美容用途の両方に使われる、実用性の高い化学物質といえます。
チオグリコール酸アンモニウムのにおいの特徴は?
チオグリコール酸アンモニウムは、硫黄臭とアンモニア臭が混ざった独特のにおいを持ちます。
これは構成成分である硫黄系物質とアンモニア由来の成分が、それぞれ強いにおいを持つためです。
多くの方がヘアサロンなどで感じる「パーマ液のにおい」は、この成分に由来するものです。
やや刺激的で不快に感じる人も多く、製品開発においてはこのにおいのマスキングや除去が課題となってきました。
チオグリコール酸アンモニウムのにおい対策について、企業で取り組んでいるところも増えているため、今後も注目が必要です。
次で具体的な取り組みをご紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください!
花王さんの香料技術と取り組みをご紹介!消臭技術の進化に注目
チオグリコール酸アンモニウムのにおい対策として、注目されているのが花王の香料・消臭技術です。
花王は「悪臭を強い香りでマスキング」するのではなく「悪臭を香料原料の一部として取り込み、心地よい香りに変換する」というアプローチを採用しています。
もう少し詳しく説明すると、悪臭をより強い香りで覆い隠すのに対し、花王のアプローチは悪臭を香りの1つの要素として捉え、心地よい香りに仕上げる技術です。
これを、花王では“ハーモセント香料”と呼んでいます。
マスキングについては「マスキング香料とは?特徴や用途をご紹介」でご説明していますので、ご興味のある方はチェックしてみてくださいね!
今後もチオグリコール酸アンモニウムのにおい対策は進化!
今後の展望としては、チオグリコール酸アンモニウム特有の硫黄臭やアンモニア臭を調和(ハーモナイズ)できる香料の開発が期待されています。
花王では、においの原因分子を解析し、それに対応する新しい香料の開発がさらに進められています。
これにより、「いやなにおいを抑えたパーマ液」や「さび取り剤」といった新たな製品が登場する可能性もあります。
こうした香料技術の進化は、製品の付加価値だけでなく、使用環境の改善にも大きく寄与すると考えられます。
チオグリコール酸アンモニウムの安全性や注意点も確認!
基本的に、チオグリコール酸アンモニウムは適切な濃度で使用すれば安全とされています。
ただし、以下のような注意点があります。
- 高濃度では皮膚刺激やアレルギー反応を引き起こす可能性がある。
- 揮発性の成分を含むため、密閉空間での使用は換気が必須。
- 酸性物質との混合で有毒ガスが発生する可能性がある。
このほか、正しく安全に使うためには保管方法も重要です。
保管方法のポイント
- 冷暗所で密封保管
- 酸化剤や酸との接触を避ける
- 使用後は容器をしっかり閉める
これらを守ることで、安全に取り扱うことができます。
チオグリコール酸アンモニウムのにおい対策に引き続き注目!
今回は、チオグリコール酸アンモニウムの基本情報や主な用途、においの特徴と安全性について解説しました。
チオグリコール酸アンモニウムは、パーマ液やさび取り剤などで欠かせない成分です。
しかし、独特の硫黄・アンモニア臭が課題となっています。
においに対し、さまざまな企業努力がされていますが、花王さんが展開する先進的な消臭香料技術には特に注目したいところです。
岡畑興産ではチオグリコール酸アンモニウムに限らず、においのきついゴムや工場から漏れ出るにおいなど、さまざまな産業消臭のテーマに取り組んでいます。
もし「におい」でお困りのことがあれば、ぜひ岡畑興産までお問い合わせくださいね!
岡畑興産が運営している「岡畑興産ブログ」では、このほかにもさまざまな化学に関する知識を発信しており、常設オンライン展示会「どこ展2.0」でも機能性原料について詳しくご紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。