2022.03.09
環境汚染を防ぐ食器用洗剤とは?界面活性剤との関係性
岡畑興産の高岡です。
環境に影響を与える食器用洗剤ってどんなものなのでしょうか?
いわゆる「家庭で消費される洗剤」は、下水道に排出される化学物質の中でも量の多いものです。
近年、生活排水を直接河川等に排出しないよう下水道や浄化槽が整備されたことで減少し、全国の汚水処理人口普及率は90%に達していますが、環境への詳しい現状も気になりますよね(2018年国土交通省・農林水産省・環境省調べ)。
今回は食器用洗剤の歴史と、環境汚染への対策に向けた製造メーカー並びに日本石鹸洗剤工業会の推進を参考に、環境汚染を防ぐ食器用洗剤について解説致します。
環境に対する食器用洗剤の歩みや汚染につながる成分とは?
日本では戦後、食の欧米化や人口増加に伴う食糧増産が進む中、野菜についた寄生虫卵や残留農薬の除去が大きな課題となっていました。
1956年に初めて台所用洗剤が発売されると行政はいち早く通達を出し、野菜や食器は台所用洗剤で洗い、食品衛生の向上に努めることを推奨しました。
これにより、野菜はもちろん水洗いでは落とせなかった食器汚れを除去するという新しい習慣が根付いていきました。
第二世代は、食品衛生法によって使用出来る成分が制約されることとなるのですが、高い洗浄力をもちながら健康・手肌への優しさにこだわり、技術革新を後押しした時代へ。
第三世代の1990年代に入ると、今では定番となっているコンパクトサイズの台所洗剤の発売が始まり、環境に配慮した容器包装プラスチックの省資源化へと進みました。
さらに環境汚染が進んだ近年では、世界的にSDGsの取り組みが重視され、環境を考慮したサステナブルな食器用洗剤が増加傾向に。
石油を原料に作られた界面活性剤による水質汚染も問題に挙がることが増え、植物由来の界面活性剤を使用する食器用洗剤の開発や、オーガニックの食器用洗剤にも注目が集まっています。
この「界面活性剤」について、さらに詳しくご説明していきましょう。
界面活性剤とは?環境汚染と界面活性剤との関係性
界面活性剤は、混ざらない水と油を混ぜる・成分を水中に分散させる働きにより、油汚れを浮かせて落とすという効果があるため、食器用洗剤に使われることが多い成分です。
界面活性剤は環境によくないイメージがありますが、実際にそうなのでしょうか。
実は一概に悪いとは言えず、家庭用品製造メーカーと日本石鹸洗剤工業会では、「安全性」「環境適合性」の調査や試験を実施して問題のないことを証明しています。
食器用洗剤に使われている界面活性剤には以下の種類があり、特に高級アルコール系が使われていることが多いです。
- 高級アルコール系:AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、AES(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)
- LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)
- 脂肪酸塩(石鹸)
- AO(アルキルジメチルアミンオキサイド)
主な界面活性剤の「生分解性(水環境での微生物による有機物の分解されやすさ)」では、脂肪酸塩>高級アルコール系、AO>LAS という結果が出ているようですが、LASも活性汚泥や河川中の微生物による生分解は良好との報告がされています。
また、脂肪酸塩は有機汚濁負荷(水環境での微生物による有機物分解に消費される酸素量)が高級アルコール系・LASと比べて低くなりますが、生分解性が高く魚に影響しにくいという結果が出ています。
一方、高級アルコール系やLASは水生生物への影響が少し大きくなります。
ただし、河川における生態系への影響については、1998年から実施されている日本石鹸洗剤工業会による「環境モニタリング」で、主要な界面活性剤の河川水中濃度は水生生物への影響がないとされる予測無影響濃度を下回っているという結果も。
脂肪酸塩(石鹸)についてはデータがありませんが、「LAS」「AE」「AO」の調査結果は以下の通り発表されています。
※参照:日本石鹸洗剤工業会 洗剤成分の安全性と環境影響に関する調査研究
上記の通り、生態系への影響は小さいことが確認されています。
尚、環境への排出量の把握と管理の改善の促進に関する法律「化学物質排出把握管理促進法(いわゆるPRTR法)が制定、第一種指定化学物質として LAS、AE、並びにAOが指定され、使用量の報告が義務づけられています。
また、界面活性剤は大きく「植物由来の界面活性剤」と「石油由来の界面活性剤」の2種類に分けられます。
実際には脂肪酸塩、高級アルコール系(AEなど)も合成界面活性剤と称されるもので、環境への影響は小さいという結果が出ていますが、排出量が多くなればPRTR法により管理対象物質となってくることがわかって頂けるかと思います。
環境汚染を防ぐなら石鹸や植物由来界面活性剤の食器用洗剤がおすすめ
このように現在の界面活性剤のリスクは少ないという結果は出ているものの、最近はより自然に分解されやすい植物由来の石鹸や「植物性界面活性剤」の人気が高まっています。
石鹸や植物性界面活性剤を含む食器用洗剤は、環境配慮がされている点以外でも、少ない量で洗浄力が高く、さらに肌にも低刺激で優しいというメリットがあります。
ただし、パーム油・ヤシ油の採取そのものが地球環境に大きな影響を与えだしたという問題もあり、一概に「環境汚染、環境への負荷が低い台所用洗剤はこれが1番!」という確実な答えは難しいとも言えます。
原料採取から製造プロセス、流通、消費、廃棄に至る環境負荷を総合的に評価するライフ・サイクル・アセスメントの考え方が重要になってきそうです。
消費者の立場からできることとしては、できる限りエコな素材のパッケージや原料のものを使い、「適正な使用量をしっかりと把握して使う」ことではないでしょうか。
食器用洗剤の選択で環境汚染を考えるキッカケに
1987年以来、台所用含む洗剤は技術革新によって「より少ない量で」を指針に改良され続けてきています。
日本石鹸洗剤工業会、家庭用品メーカーの安全性、及び環境適合性へのたゆまぬ努力もあり、現在の界面活性剤は環境への影響が少ないという結果が出ており、環境に配慮した食器用洗剤へと変化しています。
また、最近はより自然に分解されやすい植物由来の石鹸・「植物由来界面活性剤」の食器用洗剤にも注目が集まっているようです。
石鹸や植物性界面活性剤を含む食器用洗剤は、環境に優しい効果だけでなく、肌にも優しいため荒れにくいという点でも人気です。
そのような食器用洗剤を選択したり、適正な使用量を使うことで、エコライフに貢献していきましょう。
岡畑興産ブログでは、環境に優しい機能性材料や化粧品原料、その他岡畑興産の取り組みなどもご紹介しております。
あわせて参考にしてみてくださいね。