2024.06.28
セルロースナノファイバー(CNF)とは?用途や今後の展望もご紹介
こんにちは、岡畑興産の仁科です。
食品分野・化学分野ともに幅広い用途で活用されている「セルロースナノファイバー(CNF)。
木材繊維で構成されており、植物由来の次世代素材として世界中で注目されています。
今回は、そんなセルロースナノファイバーについてご紹介します。
具体的にどんなものに使われているのか、そして今後はどう展開していくことが予測されるのか、という点についてもお話ししていきますので、ぜひ参考にしてくださいね!
目次
セルロースナノファイバー(CNF)とは?
まず名前にも付いているセルロースは、植物の繊維が主成分であり、地球上で豊富に存在する木材や草などの植物から得られます。
その得られたセルロースを、ナノレベル(10億分の1まで細かくしたもの)にしたものが「セルロースナノファイバー(CNF)」です。
植物の主要骨格がセルロースのナノファイバーなので、最小単位は3~100nmという極細繊維であり、非常に軽く、鋼鉄の約5倍という強度の高さがあります。
そのほか、ガラスの1/50程度の低熱膨張性(温度変化による膨張率が低い)であること、生分解性があることも特徴です。
生分解とは環境中に存在する微生物によって分解される性質のこと。
廃棄後も微生物の働きによって分子レベルまで分解され、二酸化炭素と水となって自然界へと循環されることになるため、環境に配慮した素材として注目されています。
日本では特にセルロースナノファイバーに注力している
森林では木々がお互いの日照や栄養を奪い取らないよう、間伐が必要になります。
ペーパーレスの傾向もあって紙の需要は落ちていますが、木の適度な伐採は行う必要があり、伐採した樹木の別の用途が必要です。
このような理由から、世界各国が2050年までにカーボンニュートラルの実現を掲げ、さまざまな取り組みをしている中、特に日本ではセルロースナノファイバーに注力しています。
日本には20社以上のセルロースナノファイバーのメーカーがあり、セルロースナノファイバーは各社により太さ、繊維長が異なり、その性能も異なります。
後ほど、この各社が注力するセルロースナノファイバーについて、どんな使われ方をしているかもご説明していきますので、ぜひチェックしてみてくださいね!
セルロースナノファイバー(CNF)の製造方法も確認
セルロースナノファイバー(CNF)は機械的繊解、化学的繊解の2つの方法でセルロースをナノ化し得ることが可能です。
機械的繊解は、摩擦・剪断・衝突・振動・圧力と物理的な方法により繊維を解繊※する方法で、繊維径約15nmのセルロースナノファイバーを得ることができます。
※解繊=セルロース繊維を細かくほぐし、バラバラにすること
化学的繊維解は、酸化やエステル化などの化学反応で解繊する方法で、繊維径約3nmのセルロースナノファイバーを得ることができます。
機械的繊解は比較的安価ですが、機械を使用するので電力を多く消費することになり、繊維径が大きいので均一に混ぜることが難しくなるのがデメリットです。
一方、化学的解繊は機械的繊解よりも小さく解繊できるので、比較的均一化できますが、高価な化学薬品を使用するので、製品自体が高価になってしまいます。
こういったメリットデメリットがあることから、用途によって製造方法が異なります。
また、セルロースナノファイバーは水に溶けやすく混ざりやすい性質があるため、樹脂やゴムなどの疎水性の物質に混ぜると凝集してしまい、均一にすることが難しいです。
そのため、用途によっては水分散を行う必要があります。
セルロースナノファイバーの水分散体は高粘度なゲル状になり、径15nmでは白っぽくなり、径3nmでは透明になります。
セルロースナノファイバー(CNF)の用途・応用例をご紹介
セルロースナノファイバーの用途は幅広く、樹脂やゴムとの複合材料、増粘剤、断熱・エアフィルター、ガスバリア、光学に対して使用されます。
各社の取り組みの一例として、樹脂やゴムとの複合材料として強度を持たせることができるので、タイヤなどに使用すればカーボンブラック以上の補強効果を発揮することが可能です。
そのため、環境や人体への悪影響が懸念されているカーボンブラックを減らしつつ、生分解性を持たせることができます。
さらに、強度を保ったまま軽量化も行うことができるので、燃費の改善にも貢献しているほか、車部品のほとんどをセルロースナノファイバーにしたプロジェクトも。
従来の車と遜色ないところまできています。
また、3Dプリンターで出来るパーツにセルロースナノファイバーを混ぜることによって、強度のアップや軽量化、材料の削減、環境負荷低減につながることも期待されているほか、靴の素材にも採用されており、私達の日常に使用するものへの採用率は増えています。
靴に使われているセルロースナノファイバーについては、靴についての豆知識を発信しているブログ『くつナビ』の「セルロースナノファイバー(CNF)とは?その特徴と靴への可能性」で詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね!
岡畑興産のセルロースナノファイバーに関する取り扱い品もご紹介
セルロースナノファイバーを活用している岡畑興産の取り扱い品には、花王株式会社の『ルナフローRA』があります。
ルナフローRAでは、セルロースナノファイバーと潤滑油を組み合わせることで“すべる表面”にする技術を確立しており、その技術と知見を活用した離型剤です。
フッ素フリー・溶剤フリーの製品設計で、フッ素を使用していないほか、VOC(揮発性有機化合物)を用いていない水性コーティング剤のため、安全かつ環境にやさしい製品になっています。
「すべる表面を持続させる花王の水系離型剤「ルナフロー RA」とは?」のブログでも詳しくご紹介していますので、ぜひチェックしてみてください!
また、岡畑興産では樹脂やゴムへ分散しやすいセルロースファイバー、大阪ガスケミカル株式会社の『フルオレンセルロースファイバー』も取り扱いがございます。
一般的には分散が難しいセルロースファイバーですが、フルオレン誘導体を加えたフルオレンセルロースファイバーは樹脂やゴムへの親和性を改善しており、分散性を高めた優れた素材です。
セルロースナノファイバーそのものとしては、岡畑興産では東亞合成株式会社の『ARONFIBRO』を取り扱っております。
次亜塩素酸ソーダを用いて化学的繊解をしたセルロースナノファイバーで、濃度が高くても粘度が低いので高濃度での取扱いが容易になります。
機械的解繊と比較し、ナノ化させるための機械を必要としないので、使用する電力が少なく済むほか、化学薬品を用いての解繊となりますので均一にナノ化することが可能です。
化学薬品は高価になる傾向がありますが、使用するのが次亜塩素酸ソーダであるため、比較的安価であり、製品価格も安くなります。
セルロースナノファイバーは1%でも粘度が高く、輸送および運用する際はほぼ水を運ぶことになりますが、ARONFIBROは一般的な機械解繊品と比較して繊維径と繊維長が、化学解繊品と比較して繊維長が短めなので、粘度が低くく高濃度での取扱いが可能となります。
いずれも、もしご興味がありましたらお問い合わせお待ちしております!
セルロースナノファイバー(CNF)をめぐる課題と今後の展望は?
セルロースナノファイバー(CNF)には、高価であり、均一に混ぜて使用することが難しいという課題点もあります。
しかし、金属からプラスチックに代替される際の樹脂補強充填剤として、また、軽量化されることにより、燃費の向上が期待されています。
さらに、生分解性があることからマイクロプラスチック問題の対策にも注目されているほか、原料のセルロースを得るため、森林の適切な主伐・間伐を行うことで林業の成長産業となり、森林保全につながることも期待されています。
このように優れた機能や期待できる点が多くあるため、現在も世界中で研究・開発が進められており、今後課題点の改善や普及も進んでいくと考えられるでしょう。
また、日本の経済産業省の発表によると、国内でのCNFの市場は2030年までに1兆円の市場に成長すると見込まれています。
セルロースナノファイバー(CNF)の特徴を知って上手く活用を
セルロースナノファイバー(CNF)は、植物の繊維が主成分であるセルロースを、ナノレベル(10億分の1まで細かくしたもの)にしたものです。
軽量化だけでなく、強度をもたせることができるので、他の原料削減につながり、ひいては環境負荷の削減につながることが期待されている原料です。
色々な製品への研究・採用が進んでおり、日本だけでなく世界中で注力されている原料といえます。
そのため、価格や粘度など各メーカーで改良を進めております。
優れた性能を持つカーボンニュートラルに貢献できる素材であることから、テーマにした展示会には多くのブースがあり、とても注目されています。
もちろん、岡畑興産も注目しております!
ご紹介したように、東亞合成株式会社の『ARONFIBRO』や大阪ガスケミカル株式会社の『フルオレンセルロースファイバー』、花王株式会社の『ルナフローRA』の取り扱いがありますので、ぜひお気軽にお問い合わせくださいね。
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