2023.01.30
抗菌と抗ウイルスの違いは?正しい活用方法をご紹介!
こんにちは、岡畑興産の山口です。
抗菌と抗ウイルス、菌とウイルスの違いについて、中学・高校時代に聞き覚えはあるものの、何が違うのか忘れてしまった人も多いのではないでしょうか。
新型コロナウイルスなどの感染対策で商品を買う際に、このワードを見てどちらを選ぶべきなのか、悩んだ方もいるかもしれませんね。
今回は菌とウイルスについて簡単に復習し、抗菌と抗ウイルスの違いについてご紹介していきたいと思います。
目次
菌とウイルスの違いとは?
どちらも目に見えないほど小さい菌とウイルスですが、いったい何が違うのでしょうか。
いまだに議論はなされているようですが、生物は以下の3つの条件を持つとされており、菌(細菌)はこの全てに当てはまるため一般的に生物と認識されています。
生物の3条件
- 外界と境界によって隔てられた細胞のような構成単位をもつ
- 外界から物質やエネルギーを取り込み物質代謝する
- 自分自身と(ほぼ)同じものを自己複製し自己増殖する
一方ウイルスは、外界と自己を隔てる膜を持ち、宿主に寄生するかたちで増殖することはできますが、エネルギー代謝を行うことはできないため、生物と無生物の間に属するとされています。
原核生物である菌(細菌)は一般的に1~10μmの大きさであり、球状や棹状の形状を持ちます。
ウイルスは菌(細菌)よりもさらに小さく、その大きさは一般的に数10~数100nmくらいの大きさであることが多く、細菌の大きさの1/10~1/100ほどです。
ウイルスはさらにタンパク質の被膜であるエンベロープに覆われた「エンベロープウイルス」被膜のない「非エンベロープウイルス」に分けることができ、新型コロナウイルスはエンベロープウイルスに該当します。
【例】
エンベロープウイルス:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)、インフルエンザウイルス
非エンベロープウイルス:ノロウイルス
ウイルスの種類については過去のコラムでも紹介しておりますので、こちらも併せてチェックしてみてくださいね!
抗菌と抗ウイルスの違いを詳しくチェック
まず最初に簡単にお伝えすると、「抗菌」は菌の増殖を抑制すること、「抗ウイルス」はウイルスの数を減らすことです。
抗菌加工製品における「抗菌」とは、経産省作成の抗菌加工製品ガイドラインにおいて、「当該製品の表面における細菌の増殖を抑制すること」と定義されており、菌を殺すことではなく、その増殖を抑制することを指します。
一方で「抗ウイルス」とは、省庁が定めたような明確な定義は今のところないようですが、抗菌剤・抗菌加工製品のメーカー試験機関が集まってできた団体SIAA(抗菌製品技術協議会)では、「製品上の特定ウイルスの数を減少させること」と定義しています。
ただし、抗ウイルスのJIS試験は活性のあるウイルスが細胞を変性させる現象を用いて、ウイルスの活性度を間接的に評価するものです。
また、抗ウイルスという言葉をウイルスの「不活性化」として使っているようなものもみられます。
そのため、SIAAの抗ウイルスの定義の「ウイルスの数の減少」も「(活性な)ウイルスの数の減少」と捉えた方が良いかもしれません。
抗菌・抗ウイルス加工されている商品にはどんなものがある?
抗菌・抗ウイルス加工されている製品の認証団体として先ほど述べたSIAAがあります。
SIAAが発行しているマークがつくにはJISやISOの試験をクリアする必要があり、抗菌・抗ウイルス加工されているとされる商品の基準と、その例は以下の通りです。
抗菌加工の基準と商品例
加工されていない製品の表面と比較し、細菌の常食割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)であるものは「抗菌加工」の商品と認められます。
例:まな板、ごみ箱、エスカレーター、空気清浄機、冷蔵庫、タイルなど
抗ウイルス加工の基準と商品例
加工されていない製品の表面と比較し、ウイルスの数が100分の1以下(抗ウイルス活性値が2以上)であるものは「抗ウイルス加工」の商品と認められます。
例:まな板、エレベーター、壁紙、キッチンカウンターなど
抗菌・抗ウイルス加工されている商品は日用品から家電や建材など幅広い分野に及び、抗菌、抗ウイルスの両方の性能を持つものも多く見られます。
また、岡畑興産では殺菌剤のIPMPや抗菌性能を有するプロパンジオールを取り扱っておりますので、こちらもぜひご覧ください。
イソプロピルメチルフェノール(IPMP)とは?効果や安全性を解説
菌・ウイルスの違いを知って抗菌・抗ウイルスの正しい活用を
抗菌が製品表面の菌の増殖を抑制することに対し、抗ウイルスはウイルスの数を減少させることを指します。
菌とウイルスは異なるものであり、それぞれ種類も多岐にわたるため、抗菌・抗ウイルス加工された製品が、すべての菌やウイルスに効果があるわけではありません。
販売されている商品の基準として、加工されていない製品の表面より、細菌の常食割合が100分の1以下(抗菌活性値2以上)であるものは「抗菌加工」、ウイルスの数が100分の1以下(抗ウイルス活性値が2以上)であるものは「抗ウイルス加工」の商品と認められます。
どのような菌やウイルスに対して抗菌・抗ウイルスの効果を発揮させたいのかを理解し、正しく活用しましょう。
また、岡畑興産が運営している常設オンライン展示会「どこ展-どこでも、ひとり展示会」や「岡畑興産ブログ」でも、様々な機能性原料・化粧品原料を詳しく展示していますので、ぜひお越しください。
参考文献
1) 天文宇宙検定委員会、“天文宇宙検定 公式テキスト2021~2022年版 2級銀河博士”、pp142-145
2)一般社団法人抗菌製品技術協議会ホームページ
3)伴雅人、“総説 抗菌、抗ウイルス、抗バイオフィルムとその表面処理動向”、表面技術2021年72巻5号pp252-258
4)兼松秀幸、河合里紗、佐藤涼、“新型コロナウイルス感染症特集 抗菌、抗ウイルス、抗バイオフィルムコーティング”、日本溶射学会誌 溶射2020年57巻4号pp183-190