2025.08.07
イオン交換樹脂とは?種類や用途、イオン交換の原理も知ろう
こんにちは、岡畑興産の張です。
イオン交換樹脂という言葉を聞いたことがありますか?
学生時代の理科や化学の実験で使ったことがある方もいらっしゃるかもしれませんね。
今回は、工業的に使用されているイオン交換樹脂の種類や用途、イオン交換の原理について解説します。
目次
イオン交換樹脂とは?イオン交換の原理も確認
イオン交換樹脂とはイオン交換基をもつ合成樹脂のことです。
粒径はおおよそ0.4~0.7mmほどの球状で、外観は半透明のタラコのような見た目をしています。
このイオン交換樹脂は、水中のイオン(電荷をもつ粒子)と交換反応を行うことで、不純物を除去することが可能です。
陽イオン(カチオン)と交換する樹脂は、カチオン交換樹脂、陰イオン(アニオン)と交換する樹脂は、アニオン交換樹脂と呼ばれます。
例えば、水中のカルシウム、マグネシウム、ナトリウムなど、陽イオンを持つ不純物は、カチオン交換樹脂でキャッチできます。
一方、塩化物、硫酸、塩酸など陰イオンを持っている不純物は、アニオン交換樹脂で取り除くことができます。
家庭内の浄水システムではカチオン、アニオン両方のイオン交換樹脂を使用することによって、水中の多くの不純物を取り除くことができます。
イオン交換樹脂の再生とは?
イオン交換樹脂は水中の不純物イオンをキャッチする機能がありますが、持っている交換基の多くが交換済みとなると、それ以上イオン交換できなくなります。
その際、酸やアルカリで洗浄すると、キャッチした不純物イオンを再び放すことで、イオン交換樹脂は再び交換能力を持つことができます。
この工程を「再生」と言います。
再生には、陽イオン交換樹脂であれば塩酸や硫酸などの酸を、陰イオン交換樹脂であれば水酸化ナトリウムなどのアルカリを用いるのが一般的です。
これにより、樹脂中に取り込まれたイオンを押し出し、再び「H+」や「OH-」などの初期状態に戻すことができます
再生処理の方法には「逆流再生」や「順流再生」などがあり、再生効率や使用薬品量に応じて選択されます。
逆流再生は薬品の使用量を抑えつつ樹脂全体を均一に再生できるため、高性能なシステムでよく用いられます。
イオン交換樹脂の種類も確認!
先ほどもお伝えした通り、交換するイオンの種類に応じて「陽イオン(カチオン)交換樹脂」と「陰イオン(アニオン)交換樹脂」があります。
陽イオン(カチオン)交換樹脂
スルホン基-SO3Hを持ち、陽イオンと交換しH+を放出します。
硬水中のカルシウムやマグネシウムを除去する用途などで広く利用されています。
陰イオン(アニオン)交換樹脂
トリメチルアンモニウム基-N(CH3)3Oを持ち、陰イオンと交換し、OH-を放出します。
水の脱塩や酸性イオンの除去などに使われます。
また、これらのカチオン交換樹脂やアニオン交換樹脂のように、イオンの種類に応じて広く使われるタイプに加えて、特定の金属イオンに対して高い選択性を持つタイプも存在します。
そのひとつが「キレート樹脂」です。
キレート樹脂は蟹の爪のように金属イオンをキャッチする性質を持っており、主に重金属やレアメタルの除去・回収などで使用されています。
代表的なものは、イミノジ酢酸型〔-N(CH2COO-)2〕、アミノリン酸型〔-NHCH2PO32-〕です。
イオン交換樹脂の用途は?
イオン交換技術の歴史は古く、19世紀にはすでに土壌改良や水質調整などの用途で知られており、1930年代以降は合成樹脂による本格的な工業利用が始まりました。
現在では水処理をはじめ、以下のような幅広い分野で活用されています。
- 水処理:PFASの除去
- 食品の製造:砂糖の脱色、脱塩など
- 化学工業:塩水の精製
- 鉱業:重金属の回収
- 半導体:超純水の製造
水処理については、「水処理薬品とは」「水処理とは?目的・処理方法・使用する薬品についても解説!」も、ぜひ参考にしてみてください。
イオン交換樹脂やイオン交換の原理を知って、上手に活用しよう
イオン交換樹脂は、陽イオンや陰イオンを交換する性質をもつ合成樹脂で、水中の不純物除去に使われます。
陽イオン交換樹脂はスルホン基を、陰イオン交換樹脂はトリメチルアンモニウム基を持ち、H⁺やOH⁻と交換します。
使用後は酸やアルカリで再生可能です。食品製造や水処理、半導体分野など幅広く活用され、特定の金属を除去するキレート樹脂もあります。
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